日本映画製作者連盟(映連)のまとめによると、邦画(日本映画)と洋画(海外映画)の公開本数では、邦画は1960年頃には年間500本を超えていたが(ピークは1960年の547本)、長期的に減少傾向で推移し、1991年に230本と最盛期の半分以下で最少となった。

 一方、洋画は、1960年頃には年間200本前後であったが、1980年代後半のバブル経済の時期に急増し、1987年には邦画を逆転し、1989年には522本のピークに達した。

 ところがバブル崩壊後、洋画の公開本数は急減の後、横這い傾向となったのに対し、邦画の方は徐々に増加し、2006年には、再度、邦画が洋画を上回るに至った。また、その後、邦画、洋画ともに公開本数は増加し、2013年には、両者合わせ、初めて、1000本を超えた。なお、邦画は2012年に過去のピークである1960年の547本を超え、洋画は2013年に過去のピークである1989年の522本を超えている。「東映の岡田裕介社長は公開本数増加の理由について「デジタル化で小規模作品が上映される時代がきた」との見方を示した」(毎日新聞2014.1.29)

 その後、公開本数は邦画については最新2019年に過去最多、洋画については2017年に過去最多を記録している。

 公開本数が邦画、洋画ともに過去最多を記録しているからといって、映画館に足を運ぶ者はそう増えていない。下に映画館の延べ入場者数の推移を示したが、ピーク時の1950年代後半には11億人だったのが、最近は、1.7〜1.9億人とずっと少なくなっている。かつては赤ちゃんまで含めた人口1人当たりで見ると平均して月に1回程度映画を見に行っていたのが、今は、1年に1回行けばいい方となっている。また、2000年ごろと比べると入場者数はほぼ横ばいであり、公開本数が邦画、洋画ともに約2倍となっているのと対照的である。つまり、それぞれの公開映画を映画館で見る者の数は半減しているのである。複数のスクリーンが用意されているシネコン(シネマコンプレックス)の普及、及びテレビの大型化・高画質化、DVDレンタル店や映画専門チャンネルやネット視聴の普及がこうした状況の背景となっていると考えられる。

 もっとも2019年には映画館の延べ入場者数は1.95億人と1971年以来最多となっている。

 配給収入・興行収入の推移も、インフレの影響や邦画と洋画で異にする1本当たりの収入の変動による影響はあるものの、基本的には、公開本数と平行した推移を示している。ただし、洋画については、近年、公開本数は伸びているのに対して、興行収入は、ヒット作が出ていないなどの理由で(コラム参照)、2002年のピーク時から半減とかなり減ってきている。この結果、興行収入的にも、洋画と邦画の逆転は定着したといえる。

 邦画、洋画を合わせた国内の興行収入は、2019年に、ディズニーの大ヒットなど邦画洋画のアニメ作品の好調により2,611億円と過去最高を記録している。

 このところ、映画の興行収入はアニメ映画によるところが大きい。例えば、2013年の邦画の興行収入トップ4は、次のように、いずれもアニメ作品である。

1位 風立ちぬ 120.2億円
2位 ONE PIECE FILM Z 68.7億円
3位 映画ドラえもん のび太のひみつ道具博物館(ミュージアム) 39.8億円
4位 名探偵コナン 絶海の探偵(プライベート・アイ) 36.3億円

 また、史上最高を記した2015年の邦画収入のトップ5のうち4本は、以下のように、アニメ作品である。

1位 君の名は。 235.6億円
2位 シン・ゴジラ(非アニメ) 82.5億円
3位 名探偵コナン 純黒の悪夢 63.3億円
4位 映画 妖怪ウォッチ エンマ大王と5つの物語だニャン! 55.3億円
5位 ONE PIEACE FILM GOLD 51.8億円

 さらに、最近2019年の邦画・洋画興行収入のトップ5本は、以下のように、1つを除きいずれもアニメ作品である。アニメ以外の1作品も1992年の名作アニメのリメイク・実写版である。

1位 天気の子* 140.6億円
2位 アナと雪の女王2* 127.9億円
3位 アラジン(実写版) 121.6億円
4位 トイストーリー4 100.9億円
5位 名探偵コナン 紺青の拳(フィスト) 93.7億円
(*は発表時、上映中)

 データを公表している日本映画制作者連盟の岡田裕介会長(東映グループ会長)は2019年実績の公表に際して、「昔は男優、女優のスターがいた。今のスターはアニメのキャラクター。お客さんが望むものを作っていく」と語ったという(毎日新聞2020.1.29)。

 1人当たり映画館入場回数の比較で世界のどの国民が映画好きかを探った図録3997参照。


【コラム】洋画の人気の衰えの理由

 邦画がハリウッド映画が中心の洋画を逆転したという現象について、東京新聞の「こちら特報部」紙面ではこれを「進む米国文化離れ」として特集している(2012年5月21日)。日本人の洋画離れは、音楽や小説、留学での同様の現象、すなわち邦楽に対する洋楽のシェア縮小、米国文学の低迷、米国留学の落ち込み(図録6150参照)と軌を一にした動きだというのだ。

 洋画の人気の衰えについては

・テレビ局が制作する日本映画の大量の番組内宣伝の広告効果が洋画では期待できない
・派手な特殊効果、戦闘シーンなどによる米国映画のエンターテイメント志向への嫌気
・世界マーケット向けの、品質を落とした子どもっぽい米国映画に日本人の大人はなじめない

といった点が指摘されるが、中国やロシアではなおハリウッド映画が大人気(図録8053参照)であることを考えると、むしろ、以下のような日本人の米国文化に対する憧れの減退が根本理由ではないかとされる。

・米国的な競争社会、拝金主義に対する疑い、嫌気
・物質的な豊かさという価値づけの縮小
・イラク戦争の強引さ、格差貧困、リーマンショックなどを通じて米国ソフトパワーの影響力が減退

(2012年9月10日収録、2014年1月29日更新、2015年3月14日更新、延べ入場者数図・関連コメント追加、2016年1月27日更新、2017年1月25日更新、2018年2月27日更新、2020年1月29日更新)


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