どのような業種が提供する広告が多くなっているかを電通がまとめている広告費データで見てみよう(広告費全体及びメディア別広告費は図録5650参照)。

 図にはマスコミ4媒体における主要業種の広告費の推移を掲げた。大きく伸びているインターネット広告が範囲外である点に留意が必要である。

 2019年の上位3位は、「情報・通信」、「食品」、「化粧品・トイレタリー」の各業界となっており、この3業界が他を大きく上回っている。テレビを見ていても、携帯電話、美肌化粧品、トイレ芳香剤、インスタント食品などのコマーシャルをよく見かけるが、広告主としてこの3業界が多くを占めていることの反映だろう。

 2019年のCM好感度トップ10のリストを見ても、こうした業種別のウエイトをうかがうことができる(下図参照)。首位のauは、桃太郎と浦島太郎、金太郎が登場する「三太郎」シリーズ。2位のソフトバンクは、“ギガ不足”に悩む「ギガ国」を旅するCMなどが好評を博した。3位のNTTドコモもキャラクターによる物語のシリーズが中心である。


 近年の推移を見ると、リーマンショック後の不況の影響で2009〜11年に各業種とも大きく広告費が落ち込んでいるのが目立っている。ただし、「化粧品・トイレタリー」と「食品」だけはさほどの落ち込みがなかった点にも気がつく。美容・衛生、および食べ物は不況に強い分野であることが実感されるのである(工業統計の製造品出荷額等の推移が他業種と比較して食品工業で安定的である点は図録5250参照)。

 2009〜11年の落ち込みを除いて各業種の動きを追ってみると、ほとんどの業種で長期的な低落傾向をたどっていることが見て取れる。やはり、インターネット広告におされて、既存のマスコミ広告は退潮を余儀なくされているのだと理解される。

 こうした動きの例外となっているのが、携帯電話などの「情報・通信」である。「情報・通信」の広告費もリーマンショック後の不況の影響は大きく受けたが、その後に、過去のピークを大きく上回る伸びを示したのは「情報・通信」だけなのである。

 これは、もちろん、IT化、ネット化という時代の潮流にそって情報・通信業界が特に産業として躍進しているからであろうが、それだけが要因なのであろうか。

 そもそも、商品が多岐にわたり、広告宣伝が不可欠と思われる化粧品・トイレタリーや食品と比べて、そんなにも携帯電話のコマーシャルには販売促進効果があるものなのだろうか。携帯電話のコマーシャルは、上のCM好感度トップ10へのコメントでも分かるように、個別商品や個別サービスのPRというより、ブランドイメージの好感度を高めるだけの広告が主なのではなかろうか。

 私の個人的な印象としては、メディアは携帯電話にかかわる契約や費用の問題あるいは健康問題、すなわち子どもの依存症や視力・体力・学力低下への影響の恐れなどの負の側面を余り取り上げてこなかったのではないかという感じがある(少なくとも調査報道で)。

 そうだとすると、携帯電話事業が大手3社の独占になっており、独占利潤を確保するため、独占利潤の一部を使い、商品宣伝としては不必要なほど多量のテレビコマーシャルを流すなどして、巨額な広告料をばらまき、携帯電話の販売に不利になるような負の側面の報道を控えるよう誘導しているのではなかろうか。すなわち、メディアを丸ごと買収しているのではなかろうか。そうと決めつけることは出来ないが、そういう疑いを抱かせるような業種別広告費の動きではある。

(2020年1月24日収録、3月11日更新)


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