ここでは、天皇に対する感情の推移について図録化した。 天皇に対する日本人の感情は、1989年に昭和天皇が崩御し、現在の天皇が即位した時点を境にかなり変化している。「尊敬」感情が減り、「好感」感情が多くなり、両者がこの時期を境に逆転したのである。 そのほか、1993年の好感の急増には調査月10月に先立って6月に皇太子ご成婚がありその慶賀ムードも影響していると考えられる。また2001年の皇太子夫妻の第1子誕生の影響が2003年の好感の増加に影響していると考えられる。 2013年、18年には、「尊敬」が34%、41%と続けて調査開始以来の最高となった。即位から時間がたって存在感が増した上に、戦没者慰霊のために各地を訪問したり、2011年の東日本大震災などの自然災害に対して、被災地を訪問し、被災者を真摯な態度で気遣う天皇の姿が報じられた影響であろう。また、16年8月に退位の意向をにじませる「お気持ち」を表明したことを受け、高齢にもかかわらず様々な公務に当たっている天皇に対する尊敬の念がさらに増したという面もあろう。 年代別の推移についても図示した。 若年層では「無感情」がほぼ7割と中年層以上と比較して格段に多いのが特徴であるが、1993年に続いて、2013年にも、「無感情」は5割台まで低下している。1993年に時には「好感」が増えたためであるが、2013年には「尊敬」も増えている。これが将来に続く長期傾向なのかはなお断定できない。 戦前育ちの世代は、戦後育ちの世代と異なって、昭和天皇に対する「尊敬」の感情が特別大きかったので、昭和から平成に移り変わるにつれて戦前育ちから戦後育ちへのシフトが起こった中年層や高年層での「尊敬」の割合は大きく低下した。 ところが、21世紀に入ると、どの年齢層でも「尊敬」が増えている。これは、現在の天皇が即位後キャリアを重ね、先の大戦に対する姿勢など尊敬に値する御発言が多いこと、また、震災や原発事故に見舞われた被災者に対する思いやりの行動をとられていることによるものであろう。 天皇が日本各地を訪問している様子は図録7229参照。
参考までに皇居における新年恒例の新年一般参賀への参賀者数の推移を平成年代について示した図を下に掲げた。 新年一般参賀が始まったのは天皇誕生日の一般参賀と同じく1948年からである。当初の一般参賀は1月1日と2日の両日に記帳のみ受け付け、昭和天皇は宮内庁庁舎の屋上から様子を眺めるだけだったが、その後、庁舎バルコニーや特設のお立ち台で祝意に応えるようになり、1969年1月から皇族方と宮殿のベランダに立つ現在の形式となった(毎日新聞2019.1.3)。 新年一般参賀への参賀者数は毎年ほぼ6〜8万人で推移している。1994年に11万人を越えたのは皇太子妃雅子さまが結婚後に初めて参加したからである。2016年の8月に陛下が退位への思いをにじませたビデオメッセージを公表、翌年から参賀者数が増え始め、平成最後となる2019年には15万人を越えた。 (2010年5月20日収録、2015年3月9日更新、2017年1月9日年表、2019年1月3日新年一般参賀参賀者数推移、年表追加、2020年7月25日更新)
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