世界数十カ国の大学・研究機関の研究グループが参加し、共通の調査票で各国国民の意識を調べ相互に比較する「世界価値観調査」では調査開始以来、「もし戦争が起こったら国のために戦うか」という問を継続的に設けている。

 日本語での設問文の全文は「もう二度と戦争はあって欲しくないというのがわれわれすべての願いですが、もし仮にそういう事態になったら、あなたは進んでわが国のために戦いますか」である。各国の調査票も同様である。

 図録5223では、国防意識を示しているとも言えるこの設問に対する各国の最新の回答結果を示し、図録5223cでは主要国の回答結果の推移を示したが、ここでは日本の男女年齢別の結果と主要国の年齢別の推移を示した。

 日本の低い国防意識について「最近の若者は国を守る気概に欠ける」などと表現されることが多いが、本当だろうか?

 確かに、日本の2017年期の男女別、年齢別の結果を見ると、「国のため戦うか」への「はい」の回答率は、女性より男性、また若年層より高年層の方が大きい。

 ところが、時系列推移を見ると、若年層の回答率はほぼ横ばいであるのに対して、高年層の回答率は大きく低下してきており、両者の差は大きく縮まっている。1981年期には、若年層の11.5%に対して高年層は31.8%と2.8倍だったが、2017年期には、8.8%に対して16.6%と1.9倍にまで縮小しているのである。つまり、「最近の若者は国を守る気概に欠ける」のではなく、「最近の中高年は国を守る気概に欠ける」のである。

 これは、「戦後民主主義」の洗礼を受け、戦争は悪と叩き込まれた団塊の世代が、若い頃の精神を保ちながら中高年の域に達したからであることは言うまでもない。選挙の票数は中高年の方が圧倒的に多いので、保守党が余りに国防の強化に囚われると痛い目にあうだろう。

 図録5223cで見たように年齢計の「国のために戦う」回答率に年次変化が認められないが、これは、相対的に国防意識の高い中高年の割合が高まって回答率を押し上げる効果を中高年自体の国防意識の低下が相殺しているからだと分かる。

 世界は日本とは大きく異なる。同じ敗戦国のドイツでは一時期は日本と同じように中高年の国防意識は下がっていたが、最近は若者と同じぐらいのレベルに上昇している。敗戦ショックから回復し、EUリーダー国としての自覚が高まっているのであろう(図録5223c参照)。

 「最近の若者は国を守る気概に欠ける」という言辞がまさしく当てはまっているのは米国である。米国では、日本とは逆に、中高年の国防意識が横ばいであるのに対して、若年層の国防意識はまさしく低下傾向をたどり、2017年期にも反転していない。

 また、韓国やロシアでは、年齢によって異なる方向を向いているということはなく、若年層も高年層もほぼ同じ起伏の国防意識推移を示している。

 ロシアについて特に目立っているのは、常に、若年層の国防意識が中高年の国防意識を上回っている点である。確かに、こうした若年層の「国のために戦う」という意識の高さがなければ、さすがのプーチン大統領もウクライナへの軍事侵攻には踏み切れなかっただろう。

 なお、調査時期の表記について、例えば、2017年期と呼んでいるのは、同じ調査票が使用される調査回(原資料ではウェーブと表現。参加国の調査が完了するまで数年を要す)について2017年に最初に多くの国で調査されたからである。それ以前の年期も同様である。

(2022年6月19日収録)


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