「良いこと」と考える比率の高い国は政情が必ずしも良くない途上国が中心である。高い方から カタール 97.9% ガーナ 94.5% ウズベキスタン 93.9% トリニダードトバゴ 87.4% エジプト 86.3% などが目立っている。こうした国では、為政者が安定せず、権力の空白が生まれると、如何に一般庶民まで大きな被害を被るかを実感しているのであろう。 欧米主要先進国の同じ値は、 スウェーデン 22.5% 米国 55.2% ドイツ 58.7% オーストラリア 61.7% オランダ 72.6% であり、途上国と比較してやや低いが、日本ほど低くはない。民主的な手続きで地位についた為政者の権威・権力を尊重しないと民主主義自体が危うくなるという意識のあらわれなのかもしれない。 東アジア儒教圏諸国はこの値が比較的低い点が目立っている。すなわち、 台湾 24.2% 韓国 26.8% シンガポール 38.3% 香港 41.7% 中国 41.9% となっている。権威主義的な国として知られるシンガポールでも権威・権力が良いとは必ずしも考えていないのである。 このような状況を踏まえ、日本ほど権威・権力の必要性を感じていない国はない理由を考えて見ると、@戦国時代から江戸時代に移り変わって以降、長い間権力の空白で痛い目に合うという経験をしていない、A戦後における政情の安定、B国民性としてすでに十分に権威や権力を尊重しているという自覚、C権力者の横暴をいさめる儒教的な考え方、などによるものであろう。 なお、日本の「良いこと」の比率が特段に低いのは、原文の「オーソリティ」について、日本語の設問文で「権威や権力」と訳しているので、他国より「政治権力」と解する者が多かっただけと理解する見方もあるようだ(読者からのメールによる)。ただ、「オーソリティ」は「当局者」と訳されることもあり、他国の回答者も単に「権威」とばかり考えている訳ではなかろう。 同調査における関連設問の結果である図録5212d「民主主義にとって国民の従順さは必須か」も参照されたい。 データの対象国は図の順に以下の60カ国である。日本、スウェーデン、台湾、韓国、パキスタン、エストニア、タイ、シンガポール、スロベニア、インド、ポーランド、香港、中国、アルジェリア、トルコ、ベラルーシ、バーレーン、ウクライナ、アルメニア、南アフリカ、キルギス、カザフスタン、マレーシア、米国、アルゼンチン、ロシア、チリ、ニュージーランド、ドイツ、モロッコ、レバノン、キプロス、パレスチナ、ジョージア、オーストラリア、ウルグアイ、アゼルバイジャン、スペイン、ルーマニア、ルワンダ、クウェート、イラク、ナイジェリア、ジンバブエ、ペルー、チュニジア、オランダ、ブラジル、フィリピン、リビア、イエメン、メキシコ、コロンビア、エクアドル、ヨルダン、エジプト、トリニダードトバゴ、ウズベキスタン、ガーナ、カタール。 (2019年12月1日収録、12月6日補訂)
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