「為政者への従順さ」と「民主主義」との関係は微妙だ。

 自分たちで選んだ為政者が行う政策を気に入らないからといって、その政策に従わないとしたら、安定的な民主政治は成り立たないであろう。また従順でない選挙民に対して、政治家が人気取り政策ばかりを行うようでは、民主国家は脆弱なものとなろう。

 一方で、当選したからと言って、公約や選挙民の利益を無視して、勝手な思い込みで政策を展開する為政者に対して、国民が抗議の声をあげず従順なままでは民主主義は機能しないであろう。ましてや、公正な選挙が行われていない場合や憲法に違反する統治者の正統性を問う司法や議会の機能、あるいは国民のリコールなどの対抗手段がないようでは民主国家とはいえない。

 こうした2つの見方のうち、どちらを重視するかで、「為政者への従順さ」と「民主主義」との関係についての国民意識は大きく変わって来るであろう。

 民主国でも政争が激しく政情の安定しない国、あるいはそのために場合によってはクーデターによる独裁政権の誕生が懸念される国では、前者が重視され「従順さ必須派」となり、公正な選挙によって政情が安定している民主主義国では後者が重視される「従順さ不必要派」となる傾向があるのではないかと考えられる。

 おそらく、こうした考え方から、「為政者への従順さ」が「民主主義」にとって必須かという点を聞く設問が世界価値観調査で調べられているので、結果を図に示した。

 同調査における関連設問の結果である図録5212f「日本ほど権威・権力の必要性を感じていない国はない」も参照されたい。

 結果は、大陸ごとでも、両方の考え方の国の差が大きいことが分かる。その中で、サハラ以南アフリカや南アジアではやや「従順さ必須派」の国が多くなっている。

 「従順さ不必要派」が多いのは、スウェーデン、ドイツなどのヨーロッパ先進国、及び日本である。日本は特に「従順さ必須派」が8.7%と世界一少ない「従順さ不必要派」の国である点が目立っている。

 アジアの中でも「従順さ必須派」の国としては、かつて国を構成するマレー人、インド人、中国人が相互に激しく対立した歴史を有し、今では、極力そうした国内の政治対立が深刻にならないように国民が気を使っているマレーシアが目立っている。

 図で取り上げているのは世界60か国であり、これらの国名を、図の上から下、左から右の順にカッコ内の「従順さ必須派」割合(%)とともに示すと、チリ(72.5)、エクアドル(62.6)、アルゼンチン(59.0)、ペルー(55.6)、コロンビア(53.2)、トリニダードトバゴ(51.4)、ウルグアイ(49.7)、メキシコ(47.0)、ブラジル(41.5)、米国(41.3)、ウズベキスタン(80.1)、キルギス(66.4)、カザフスタン(66.2)、アルメニア(65.0)、アゼルバイジャン(59.6)、スペイン(58.3)、ロシア(57.0)、トルコ(52.6)、キプロス(50.1)、ウクライナ(47.9)、ルーマニア(46.0)、ジョージア(44.1)、ベラルーシ(42.6)、エストニア(38.3)、スロベニア(36.7)、オランダ(30.7)、ポーランド(28.8)、スウェーデン(22.1)、ドイツ(10.5)、カタール(84.4)、エジプト(79.2)、ヨルダン(78.7)、クウェート(72.4)、イエメン(69.9)、チュニジア(64.1)、イラク(55.0)、リビア(54.6)、モロッコ(49.2)、パレスチナ(48.2)、アルジェリア(45.8)、レバノン(42.5)、バーレーン(37.0)、ガーナ(87.3)、ナイジェリア(76.3)、ルワンダ(75.4)、南アフリカ(69.5)、ジンバブエ(68.8)、パキスタン(72.8)、インド(57.6)、マレーシア(87.0)、タイ(65.4)、フィリピン(61.5)、中国(53.8)、シンガポール(49.8)、台湾(44.3)、オーストラリア(42.9)、ニュージーランド(37.3)、香港(32.3)、韓国(29.2)、日本(8.7)である。

(2020年6月26日収録)


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