新型コロナ感染症のパンデミックが世界に及ぼした影響の大きさを測る一つの方法は、その時期に経済(GDP)のマイナス成長に陥った国の数を以前の歴史的事件の際の同様の数と比較することである。

 こうした指標を掲載している世界銀行の世界開発報告書(2022年)から図を引用した。独立国の数は大きく増加しているので影響度を厳密に図るためには世界の全体の国数で除した構成比で示す必要があるということから、図はマイナス成長(Contraction)の国数自体ではなく国数割合であらわしている。

 新型コロナでマイナス成長となった国数は172か国にのぼり、国数割合は世界191か国の90%と過去最多だった大不況の43か国、83%(1931年)を超えている。戦後で比較するとリーマンショックを伴う世界金融危機の118か国、62%(2009年)を大きく上回っている。

多数国がマイナス成長となった事件
事件 年次 国数 国数割合(%)
第1次世界大戦 1914〜18 11〜26 28〜64
大不況 1929〜33 12〜43 24〜83
第2次世界大戦 1939〜45 13〜27 26〜59
第1次オイルショック 1973〜75 27〜67 18〜46
第2次オイルショック 1981〜83 67〜76 41〜49
ソ連崩壊 1991〜93 87〜91 48〜51
世界金融危機 2007〜09 24〜118 13〜62
新型コロナ 2020 172 90

 なお、瞬間風速的には新型コロナの影響は過去最大であったが、全体的影響という観点からは、第1次世界大戦や大恐慌、第2次世界大戦などは何年も多くの国がマイナス成長となっているのでマイナス成長が多かったのがほぼ2020年に限られていた新型コロナの影響よりも深刻だったともいえる。

 また、第2次世界大戦の以前と以後を比較すると、以前は毎年のようにマイナス成長に多くの国が襲われていたのに対して、以後は特定の時期を除くとマイナス成長の国は少なく、比較的安定的な経済推移である点が目立っている。特に、戦後直後から第1次オイルショックの時期には、日本では高度経済成長の時期と重なっているが、世界的にも非常に安定的に経済が推移していたことが分かる。

(2023年9月19日収録)


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