20世紀以降の世界の主な自然災害を時系列的に並べた図を掲げた。死者・行方不明者数で5000人以上を掲載の基準とした。なお、日本の主な自然災害については図録4365参照。

 死者・行方不明者の数から見ると、20世紀最大の自然災害は、最大は1931年の中国長江等沿岸の370万人であり、第2位は1959年の中国の洪水による200万人、第3位は1939年の中国湖南省の50万人である。以上3位までは平成26年版防災白書までは記載がなかったものである。1959年は中国の「三年自然災害」の初年度に当っており(図録8210参照)、報道の自由がない国ではこうした数字が公式にあらわれて来るのにこれだけ時間がかかるということであろう。

 第4位は1970年のバングラデシュのサイクロン被害であり、30万人の犠牲者が出ている(平成25年版の防災白書までは50万人とされていた)。5番目の規模の災害は、1976年の中国天津・唐山地震であり、24.2万人、6番目は、2004年に起こったスマトラ島沖地震・インド洋津波であり、22.6万人以上、7番目は2009年のハイチ地震の22.3万人の死者・行方不明者となっている。

 日本の関東大震災は14.3万人の犠牲者を生み、日本での最大の災害であったが、世界的には20世紀以降10番目の自然災害である。なお、関東大震災の死者・行方不明者数の従来の定説は1925年調査に基づき、14万2000人余りとされてきたが、2003年頃、新しい実態調査により焼死者数と行方不明者数のダブルカウントが明らかとなり、10.5万人の犠牲者に改められた(理科年表でも2006年版から修正、平成24年版・平成27年版防災白書ではもとの14.3万人で記載)(門倉貴史「本当は嘘つきな統計数字 (幻冬舎新書)」2010年)。

 平成18年防災白書によれば、2005年の米国のハリケーン・カトリーナでの経済被害額は数百億から千数百億と推計されており、史上最大規模となったとされているが、死者・行方不明者数は1,800人とされ、平成24年版の5,300人から下方修正されたため、図には非掲載となった。

 20世紀を通じ、全体的には、地震や風水害による大規模災害が、アジア地域で多発している点が目立っている。

 参考に下図に図録4375に示した1970年以降の世界の自然災害による死亡者数と経済的損失額の推移を再掲した。図録には示されなかった1983年のエチオピアの干ばつの死者により、1970年以降では1983年が最大の死亡者数の年になっている。



 以下に、図録に掲げた20世紀以降の世界の主な自然災害の一覧表を掲げる。

20世紀以降の主な自然災害の状況
災害の種類 国名(地域名) 死者・行方
不明者数
(概数、人)
1900 ハリケーン・ガルベストン 米国、テキサス 6,000
1902 火山噴火 マルティニク(西インド、プレー山) 29,000
1902 火山噴火 グアテマラ、サンタマリア火山 6,000
1905 地震 インド、北部 20,000
1906 地震(嘉義地震) 台湾 6,000
1906 地震 チリ 20,000
1906 台風 香港 10,000
1907 地震 中国、天山 12,000
1907 地震 ウズベキスタン(旧ソ連) 12,000
1908 地震(メッシーナ地震) イタリア、シシリー 75,000
1911 洪水 中国 100,000
1912 台風 中国、温州 50,000
1915 地震 イタリア、中部 30,000
1916 地すべり イタリア、オーストリア 10,000
1917 地震 インドネシア、バリ島 15,000
1918 地震 中国、広東省 10,000
1919 火山噴火 インドネシア、クルー火山 5,200
1920 地震/地すべり(海原地震) 中国、甘粛省 180,000
1922 台風 中国、汕頭 100,000
1923 地震/火災(関東大震災) 日本、関東南東部 143,000
1927 地震 中国、南昌 200,000
1931 洪水 中国、長江等沿岸 3,700,000
1932 地震(甘粛地震) 中国、甘粛省 70,000
1933 洪水 中国、河南省他 18,000
1933 地震 中国 10,000
1935 洪水 中国 142,000
1935 地震(クエッタ地震) パキスタン、バルチスタン地方 60,000
1939 地震/津波 チリ 30,000
1939 洪水 中国、湖南省 500,000
1939 地震 トルコ、東部 32,962
1942 サイクロン バングラデシュ 61,000
1942 サイクロン インド・オリッサ 40,000
1944 地震 アルゼンチン、中西部 10,000
1948 地震(アシガバート地震) トルクメニスタン(旧ソ連) 110,000
1949 地震/地すべり タジキスタン(旧ソ連) 12,000
1949 洪水 中国 57,000
1949 洪水 グアテマラ 40,000
1954 洪水 中国 40,000
1959 洪水 中国 2,000,000
1959 台風(伊勢湾台風) 日本 5,100
1960 洪水 バングラデシュ 10,000
1960 地震 モロッコ、南西部 12,000
1960 地震/津波 チリ 6,000
1961 サイクロン バングラデシュ 11,000
1962 地震 イラン、北西部 12,000
1963 サイクロン バングラデシュ 22,000
1965 サイクロン バングラデシュ 36,000
1965 サイクロン パキスタン、南部 10,000
1968 地震 イラン、北西部 12,000
1970 地震 中国、雲南省 10,000
1970 地震/地すべり ペルー、北部 70,000
1970 サイクロン・ボーラ バングラデシュ 300,000
1971 サイクロン インド・オリッサ 10,000
1972 地震(マナグア地震) ニカラグア 10,000
1974 地震 中国、雲南省・四川省 20,000
1974 洪水 バングラデシュ 28,700
1975 地震 中国、遼寧省 10,000
1976 地震(グアテマラ地震) グアテマラ 24,000
1976 地震(唐山地震) 中国、天津 242,000
1977 サイクロン インド、アンドラ・プラデシュ州 20,000
1978 地震 イラン、北東部 25,000
1982 火山噴火 メキシコ、エルチチョン火山 17,000
1985 サイクロン バングラデシュ 10,000
1985 地震 メキシコ、メキシコ市 10,000
1985 火山噴火 コロンビア、ネバド・デル・ルイス火山 22,000
1987 地震 エクアドル北西部 5,000
1988 地震(スピタク地震) アルメニア(旧ソ連) 25,000
1990 地震(マンジール地震) イラン、北部 41,000
1991 サイクロン/高潮 バングラデシュ、チッタゴン等 137,000
1991 台風・アイク フィリピン 6,000
1993 地震(マハラシュトラ地震) インド 9,800
1995 地震(阪神・淡路大震災) 日本 6,300
1998 ハリケーン・ミッチ ホンジュラス、ニカラグア 17,000
1999 地震(イズミット地震) トルコ、西部 15,500
1999 サイクロン インド 9,500
2000 洪水 ベネズエラ 30,000
2001 地震(インド西部地震) インド 20,000
2003 地震(バム地震) イラン 26,800
2004 地震・津波(2004年スマ
トラ沖地震・津波)
スリランカ、インドネシア、モルディブ、インド、タイ、マレーシア、ミャンマー、セイシェル、ソマリア、タンザニア、バングラデシュ、ケニア 226,000以上
2005 地震(パキスタン地震) パキスタン、インド、北部 75,000
2006 地震/火山噴火 インドネシア、ムラピ火山 5,800
2008 地震(四川大地震) 中国 87,500
2008 サイクロン・ナルギス ミャンマー 138,400
2010 地震(ハイチ地震) ハイチ 222,600
2011 地震・津波(東日本大震災) 日本、東北・関東地方等 19,000
2013 台風・ハイヤン フィリピン、レイテ等 6,200
2015 地震(ネパール地震) ネパール 9,000
(注)死者・行方不明者数5000人以上の自然災害
(資料)内閣府「防災白書」(平成27年版、2011年以降令和4年版)

(2006年6月15日収録、2008年6月3日更新、2009年6月30日更新、2011年3月14・16日更新、2012年1月23日1970年以降毎年の自然災害による世界の死亡者数・経済的損失額の推移図掲載、7月5日更新、2014年7月8日更新、2015年8月24日・26日更新、2018年7月9日更新、2023年2月11日更新・データ変更なし、2月12日以降逐次報道追加)


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