主な動物の聴力(耳のよさ)を最大周波数の高さであらわした図を掲げた。

 脊椎動物の中では、哺乳類の聴力が高い。最高はコウモリの400kHz(キロヘルツ)であり、イルカの200kHz、イヌの135kHzがこれに次いでいる。ネコも47kHzとかなり耳がいい。

 ヒトの可聴周波数を基準に20ヘルツ以下の音を「超低周波」、2万ヘルツ以上の音を「超音波」と呼ぶ。コウモリは単に高い音を聞けるだけでなく、声帯に高い圧をかけ、口あるいは鼻から5万〜9万ヘルツの超音波を発し、仲間との交信のほか、反響定位、すなわち、超音波の直進性と反射性を利用して、対象物までの距離やその大きさや形の認識を行っている(岩堀修明「感覚器の進化」ブルーバックス、2011年)。

 イヌやネコの訓練などに用いられるホイッスル(笛)は「犬笛」と呼ばれる。概して16000Hzから22000Hzの音を出せる犬笛を人の耳はほとんど聞き取ることができない。従って、犬笛は、人の可聴範囲を調べるために使われることもあるという。

 ネコが掃除機の音が嫌いだったり、クシャミに非常に驚くのも耳がいいせいなのだろう。

 哺乳類の中で最も耳がよくないのがヒトであり、子供の頃は21kHzと他の哺乳類よりはかなり低いとはいえ、ある程度高い音まで聞き取れるが、老齢者では5kHzがせいぜいとかなり耳が遠くなる。

 耳が遠くなること、つまり「難聴」は高齢者特有の特徴である。何歳ぐらいから特に耳がきこえにくくなるかについては図録2131参照。難聴はそれで直接死ぬことはないが、実は、多くの者がこうむる健康ロスの大きさから、自殺や虚血性心疾患並みのマイナスを人類に与えている(図録2050参照)。

 鳥類はニワトリやウソなどヒトよりよく聞こえる種類もいるが、スズメなどヒトより劣る種類も多い。爬虫類や両生類、魚類になるとヒトより聴力はかなり劣る種類ばかりである。耳が遠くなった高齢者の聴力はカメ並みといえる。

 一方、昆虫は、夜行性のガのように高い周波数を聞き分けるものもあれば、コオロギのように低い音しか聞き取れないものもある。セミが聞き取れる最大周波数はちょうどヒトと同じぐらいである。セミはオスが自分のいる場所をメスに知らせようとして鳴く。昆虫の中でもセミの鳴き声が特にうるさいのはヒトにとって聞き取りやすい音域だからだといえよう。

 聴力には、ここで示した最大周波数のほかに、聞き取れる音の大きさや音の分解能ともいうべき聴能などがある。どちらの方角から音が聞こえるかを判別する能力(聴能)については下図のように、ネコがもっとも耳がよく、イヌ、ニワトリ、ヒトと続いている。


   図で取り上げたのは、図の順番に、ヒト(子供、35歳、59歳、老齢者)、コウモリ、イルカ、イヌ、ハツカネズミ、ラット、ネコ、チンパンジー、モルモット、ヒト、ニワトリ、ズアオアトリ、ウソ、コマドリ、モリフクロウ、トラフズク、スズメ、ホシムクドリ、ペンギン、セキセイインコ、カワラバト、カナリア、ミミズク、カラス、カモ、トカゲ、パラグアイカイマン、淡水カメ、ヘビ、ウシガエル、アホロートル、ブラウンブルヘッド、モノウ(アブラハヤ)、キンギョ、サメ類、ウナギ、夜行性ガ、キリギリス、セミ、バッタ、コオロギである。

(2019年12月12日収録)


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