世界の女子プロテニスを統括する女子テニス協会(WTA)における選手登録が日本である大坂なおみ選手が、2019年1月26日に行われたテニス四大大会の第1戦全豪オープンの女子シングルス決勝で、ペトロ・クビトバ(チェコ)を接戦の末下し、初優勝した。

 この大会での優勝で与えられるポイント数から、大会後に、男女シングルスを通じ、アジア勢初の世界ランキング1位となることも確定した。

 大坂なおみ選手は北海道出身の母・環さんとハイチ出身の父フランソワさんとの間に大阪で生まれ、3歳で米国に移住し、現在、フロリダ州に住んでいる。日本語を話すのはまだ苦手である。母方の祖父は北海道の根室漁協組合長。日本と米国の二重国籍なので、選手登録はどちらの国でもよく、事実米国テニス協会からの働きかけもあったというが、無名時代における日本からの支援を重くみた一家の意向により、日本テニス協会所属の選手として日本登録で出場、「日本人」として初の快挙を成し遂げたのである(日刊スポーツ2019.1.27)。

 ここでは大坂なおみ選手のWTA世界ランキングの推移を、他の有名選手と比較しながら追ったグラフを掲げた(WTAランキング出所)。

 世界ランキングは過去1年間の成績上位16大会での成績によって与えられるポイントの合計によって決まる。テニス大会の成績といっても4大大会(グランドスラム)のポイントが最も高く、ランクの低い大会での成績はだんだんポイントが小さくなる仕組みである。トップ10選手は4大大会とプレミアマンダトリー(インディアンウェルズ、マイアミ、マドリード、北京の4大会)の計8大会への出場が義務づけられている(欠場しても成績上位16大会に含まれゼロポイントとしてカウント)。

 世界ランキングは世界各地の大会を転戦するテニスの「ツアー」によりポイントを獲得していくことで得られるプロテニス選手としての証しなのである(東京新聞2019.1.27)。

 グラフを見ると、若い選手が実力をつけていって順位を上昇させ、キャリアを重ねて頂点に立ったベテラン選手がある時期から順位を下降させる傾向が認められる。

 大坂選手と2019全豪オープンで決勝戦を戦い、もし勝てば大坂選手同様ランキングが1位となったクビトバ選手が、2017年に11位にまでランクを下げた後に2018年には4位に回復し、全豪オープンでの活躍により現在自己最高位の2位にまで戻しているのが例外であるが、これは同選手が2016年12月に自宅で不法侵入した強盗に襲撃され利き手の左手に重傷を負い、競技大会復帰までに半年近く時間がかかったためである。

 シャラポア、セリーナ・ウィリアムズ両選手のランキング急落にも特殊事情が影響している。すなわち、シャラポア選手はドーピング違反により2016年1月から2年間の選手資格停止処分を受けたが、その後スポーツ仲裁裁判所への提訴の結果、資格停止期間は15か月に短縮された。そのため、2017年4月からツアーに復帰したが、2018年の最高位は21位に止まった。セリーナ・ウィリアムズ選手は妊娠が分かって2017年2月から休養し、9月に出産、翌18年3月からツアーに復帰した。現在のランキングの低さはこの影響の側面もある。

 なお、両選手のようにツアーに一定期間のブランクがあるとランキングが急落し、復帰後もノーシードの選手として大会に出場せざるを得ないので、初戦から競合選手と対戦する可能性も増し、不利な条件に置かれる。ドーピング違反はともかく妊娠・出産がランキング上不利になるのは不当だとしてセリーナ・ウィリアムズ選手はWTAに改善を働きかけていたという。そのためかは分からないが、女子テニス界では、2019年から、妊娠・出産でツアーを離れた選手は、子どもが生まれてから最長で3年間、12大会まで、休養前に保持していたランキングで復帰できることになった。WTAは男子テニスの運営団体から1973年に独立し、男子とは大きな格差のあった賞金額を男女同等にするなどの成果をあげてきたというが、今回の措置はその延長線上にあろう(東京新聞「小川勝の直言タックル」2019.1.28)。

 参考までに以下に、世界ランキングに最も大きな影響を与える4大大会の近年の優勝者を掲げた。連勝はセリーナ・ウィリアムズ以降では大坂なおみがはじめてである。2019年全豪オープンでセリーナ・ウィリアムズ選手は世界ランキング1位のハレプ選手に勝利したので世界ランキングは16位から11位にやや戻している。

テニス4大大会(グランドスラム)女子シングルス優勝者
全豪 全仏 ウィンブルドン 全米
2014年 李娜 シャラポア クビトバ S・ウィリアムズ
2015年 S・ウィリアムズ S・ウィリアムズ S・ウィリアムズ ペンネッタ
2016年 ケルバー ムグルサ S・ウィリアムズ ケルバー
2017年 S・ウィリアムズ オスタペンコ ムグルサ スティーブンス
2018年 ウォズニアッキ ハレプ ケルバー 大坂なおみ
2019年 大坂なおみ      
(注)色は連勝  (資料)東京新聞(2016年1月27日)

 なお、全豪オープンの優勝と前後して、日清食品がCM動画の中で大坂選手の肌の色を勝手に白く描いたことをニューヨークタイムズなど海外メディアが大きく取り上げた件に対する大阪選手の反応について、時事通信(それを引用したヤフー)と朝日新聞は、彼女の発言は「なぜ多くの人が騒いでいるのか分からない」だったと報じたが、実は、「このことで心を乱される人たちのことも理解はできる。この件についてはあまり気にしてこなかった。答えるのはきちんと調べてからにしたい」という逆の内容を誤訳したものだった(ダイヤモンド・オンライン2019.1.31)。

(2019年1月26日収録、1月28日更新、コメント補訂、2月1日CM動画の件)


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