成人スキル(大人の学力テスト)における移民を除いた比較は図録3936参照。 移民と非移民の成績差を見てみると、フィンランド、スウェーデンなど北欧諸国やドイツ、オランダなどでは、非移民が移民を大きく上回っており、英米ではその差が小さい。 移民と非移民の差が大きい要因としては、そもそも学力の低い国からの移民が多い場合と移民後の教育で移民生徒と非移民生徒の学力差を埋め切れていない場合とがあろう。 OECD諸国では、概して、移民生徒の成績の方が低いが、非OECD諸国のシンガポール、マカオといった中華系の東アジア国やアラブ首長国連邦やブルネイ、カタールといった産油国では移民生徒の方が成績が上位である。 OECD諸国の中では、オーストラリアが唯一、移民生徒の方が非移民生徒の成績を上回っており、一般の先進国とは移民に対する考え方が異なるゆえんとなっている。 子どもの学力が将来の経済成長や国力にむすびつくとしたら、移民生徒の方が学力が上の国では、むしろ移民を歓迎する風潮が支配的であったとしてもおかしくはないのである。 次に、全体のランキングと移民生徒を除いたランキングとを比べてみよう。 日本の読解力ランキングは15位である(過去からの推移を含めて図録3940参照)。一方、移民を除いたランキング(移民が一定以上の国では全体の代わりに非移民のテスト結果で順位づけ)では、日本は20位と5位ほどランキングが下がる。やはり、移民が少ないということから日本はやや成績が過大評価されているといえよう。 移民の多い欧米諸国では、移民を除いたランキングは上昇する。例えば、ドイツは全体ランキングは日本を下回る20位であるが、移民を除いたランキングは9位と日本を大きく上回っている。 ドイツ以外で、全体ランキングより移民を除いたランキングの方が、3位以上、上の国としては、スウェーデン、ベルギー、オーストリア、スイス、ルクセンブルクが挙げられる。 こうした国では、移民生徒が非移民生徒と比べて、非常に低い地位に甘んじており、差別や国民統合の観点からは問題があろう。 図で取り上げた対象国は49カ国であり、図の順に、エストニア、カナダ、フィンランド、アイルランド、韓国、ポーランド、スウェーデン、ニュージーランド、米国、英国、日本、オーストラリア、デンマーク、ノルウェー、ドイツ、スロベニア、ベルギー、フランス、ポルトガル、チェコ、オランダ、オーストリア、スイス、ラトビア、イタリア、アイスランド、イスラエル、ルクセンブルク、ギリシャ、北京・上海・江蘇・浙江、シンガポール、マカオ、香港、台湾、クロアチア、ロシア、マルタ、セルビア、アラブ首長国連邦、コスタリカ、モンテネグロ、ヨルダン、ブルネイ、カタール、サウジアラビア、アゼルバイジャン、カザフスタン、パナマ、レバノンである。 (2020年7月11日収録)
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