

パリに本社を構える世界的なマーケティング・リサーチ会社であるイプソス社は2025年に世界30カ国、2.3万人を対象とした教育モニター調査を実施し、こうした好きな授業科目の男女別の回答率の違いを明らかにするとともに世代別の男女差からジェンダー差が縮まっているかを調べているのその結果をグラフにした。 なお、報告書で公表されている結果は各国別ではなく、世界30カ国の平均なので世界的傾向をあらわしているデータである。 図aには科目別の男女の回答率を掲げている。左に男子好き、すなわち男子の回答率が女子を上回っている科目、右に女性好き、すなわちその逆の科目を掲げている。 科目の並びは男子マイナス女子の大きい順なので、男子好きの科目は左ほど男子好きが著しい科目、女性好きの科目は右ほど女子好きが著しい科目となっている。 男子好きが特に目立つ科目は、体育、数学、コンピュータサイエンスなどであり、女子好きが特に目立つ科目は芸術、自国文学、外国語などである。 図bには高齢世代(ベビーブーム世代)と若年世代(Z世代)とで男女差がどの程度かを示している。例えば、理科の男女差は高齢世代で12.9%ポイントだったのに対して若年世代では0.3%とほとんど差がなくなっている。古い世代は理科好きが男子に片寄っていたのに対し、今の若い世代は理科好きに関して男女差が失せたと捉えることができる。 理科と同じ状況となっているのは歴史や数学である。ただし地理は男子好きの傾向がなお続いている。 女子好きの科目でも高齢世代の男女差は-9.9%ポイント(すなわち女子の方が好き)だったのに対して若年世代の男女差は-3.1%ポイントと大きく差が縮まっている。文学や外国語でも同様の傾向にある。 男女差が縮まる科目が多い中で、むしろ男女差が拡大している科目も数は3科目と少ないがある。芸術はますます女子好きとなっているし、体育はますます男子好きの科目となっているのである。 しかし、全体としては男女差が縮まる傾向にあることは確かである。世界的に男女のジェンダー差は少なくとも授業科目の好みの点からは確実に解消の方向に向かっていると言えよう。 この2つのデータについてイプソス社の報告書はジェンダーギャップの縮小を是とする立場から次のようにコメントされている。 「学校の授業科目の人気には、ステレオタイプな「男子向けの科目」と「女子向けの科目」という区分に沿った明かなジェンダー格差が見られる。しかし、理科、数学、文学、国語といった科目では、心強いことに、こうしたギャップは世代間で縮小してきている」。 (2025年11月6日収録)
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