ここではそこから2種類の各国データを図録にした。1つは教育分野を越えた活動分野への教師の関心度であり、もう1つは校長の実務的な学外との関わり度合いである。関連図録としては図録3876(日本の先生は世間知らずか)がある。 原資料の白書記載のグラフタイトルは、前者は「教育分野以外のパートナーが取り組む職種ごとの学習活動へ参加する教師は少ない」であり、後者は「校長の学外とのコラボレーションを強化する余地がある」であり、白書の問題関心がどのようなものかを示している。 教育分野を越えた活動分野への教師の関心度は、教師が学外企業等への視察研修にどのくらい参加しているかで調べている。 日本の教師の参加率は9.1%とOECD平均の17.4%を大きく下回っており、学外企業等の活動への関心度は低い。もっとも主要先進国のカナダ、米国、イタリア、英国、フランスなどもこの指標はいずれも低く、フランスは5.0%と最低となっている。学外企業等の活動への関心度の低さは、教育界が教育界としてシステム化、専門化している主要先進国に共通した特徴ともいえよう。 もう1つの指標は、教師でなく、校長が学外の地域組織や企業との関わりで費やす時間である。 こちらでは、日本の場合、世界第2位の高さになっており、学外との関わりが緊密であることを示している。主要先進国との比較では、イタリアでは日本を上回る1位の高さであるが、英国、米国、カナダはずっと低くなっており、上の指標とは性格が異なっている。なお、フランスは中間的な位置にある。 日本やイタリアでは教育者の教育分野以外の世界との関係は、教師は校長にもっぱら任せきりする傾向があるとも言えよう。 なお、こうした校長の学外との関係の緊密さが、生徒の保護者との関係の緊密さから生まれているに過ぎないかどうかかを見るために、参考として保護者との関わりに費やす時間も掲げ垂れている。両者の緊密さは余り関係がないようである。例えば、日本の校長の地元組織・企業との関わりは緊密だが保護者との関わりは特に緊密だとは言えないのである。 このように、日本の学校では、教育分野以外の活動への教師の関心は低いが、校長の学外との実務的な関わりは大きい。原資料の白書の関心からは、日本で環境保護活動に学校をコミットさせるためには、やはり、校長を通じる経路が突破口になりやすいと結論づけられよう。 対象国は、最初の図の順に、リトアニア、ラトビア、スロバキア、スロベニア、アイスランド、フィンランド、韓国、チェコ、コロンビア、デンマーク、エストニア、トルコ、オランダ、ポルトガル、ニュージーランド、オーストラリア、ハンガリー、スペイン、オーストリア、スウェーデン、チリ、ベルギー、メキシコ、カナダ、米国、日本、イタリア、ベルギー、ノルウェー、英国、フランスである。 (2024年2月11日収録)
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