フランスで2005年10月27日に発生した暴動は、全土に波及し、非常事態法の発動にまで至り、1968年の反体制運動「5月革命」以来の騒乱となった。このフランスの暴動は、差別や貧困に悩む移民社会の問題を浮き彫りにした。フランスの暴動のほか、ロンドンの同時爆破テロ事件など、2005年はヨーロッパのイスラム系移民に注目が集まる事件が相次いだ。移民たちはどこから、どんな経緯でやってきたのかに関心がもたれる。

 移民は、過去に外国人労働者が定住し、国籍を取得し、さらに2世、3世が生まれて、増加したものである(フランスだと国内で生まれ、5年以上滞在すればフランス国籍を取得できる)。ここでは、現在の外国人労働者がどこから来ているかを図録化した。

 具体的には、欧米主要国(ドイツ、英国、フランス、イタリア、スウェーデン、米国)の国籍別(米国の場合は出身地別)の外国人労働者数を示した。

 国によりどの国の外国人労働者が多いかは多様であるのが特徴である。

 ドイツでは、外国人労働者362万人中、トルコ人が100万人と多い。

 英国では、アイルランド人が多いほか、旧植民地のインド人パキスタン人なども多い。

 フランスでは、ポルトガル人が多いほか、モロッコ、アルジェリア、チュニジアといった旧アフリカ植民地の人々が多い。

 イタリアでは、モロッコ人、アルバニア人が多い。

 他方、スウェーデンなどは、外国人労働者といっても、ほとんどがヨーロッパの隣国の労働者である。

 米国はラテンアメリカ出身の移民労働者が多い。

 なお、移民の数については、読売新聞2005.11.24が以下のように整理している。

「主要国政府統計によれば、ドイツの人口約8200万人のうち、「外国人」は約670万人。フランスは、人口約6200万人のうち「移民」が約430万人。英国は01年時点で、同国の人口5880万人のうち、白人は92%で、約8%に相当する約460万人がアジア系など「民族的少数派」だ。スペインでは、総人口約4200万人のうち「合法外国人」約185万人が滞在する。
 また、ヨーロッパにイスラム教徒はどれくらいいるのかというと、やはり国ごとに統計が異なるので集計は難しい。...
 20世紀初頭のフランスには、イスラム教徒がほとんどいなかったが、現在では人口約400万〜500万人にまで増え、今や第2の宗教である。また、英政府統計では、キリスト教72%に対し、イスラム教は3%で2番目だ。パキスタン、バングラデシュからの移民が増えたためだ。」

(2006年1月16日収録)


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