労働政策研究・研修機構が2014年に行った「日本人の就業実態に関する総合調査」によると、いじめ、パワハラとなる可能性のある行為を過去1年間に何らか受けた者の割合(これを受苦率と呼んでおこう)は34.4%と約3分の1にのぼった(具体的にどんな行為だったかについては図録3265参照)。

 そのうち、その行為により、実際に、いじめ・パワハラを受けたと感じた者は、3分の1に当たる11.5%だった。職場のいじめ・パワハラ被害率は11.5%、1割強だったと言えよう。

 ここでは、さらに、属性別に集計した結果を掲げた。

 男女別であると、何らか問題行為を受けた受苦率は、それぞれ、33.2%、35.5%、いじめ・パワハラの被害率は、それぞれ、10.0%、13.1%といずれも女性の方が多くなっている。

 男女・年齢別では、現役引退後の扱いをうけることが多い60代については男女とも、受苦率、被害率が低くなっている。

 60代を除く年齢別では、男性の場合、受苦率は30代の41.9%から50代の31.9%まで差が大きいのに対して、被害率は、20代の11.6%から50代の10.3%の範囲と差が余り大きくない。

 30代までの若者は職場で迷惑だと感じる行為を多く受けているが、いじめやパワハラとまではいえない場合も多いのだといえる。例えば、飲み会を強制されるからといって、パワハラといえるまでの強制はそう多くないのであろう(飲み会の強制については図録3265参照)。

 何らか問題行為を受けた受苦率ほど、いじめ・パワハラの被害率は差が大きくないという現象は、男性年齢別のほか、学歴別、雇用形態別、企業規模別にも認められる。つまり、どんな職場でもいじめ・パワハラの被害は発生しているという傾向が認められる。

 女性の年齢別には、受苦率では20代が43.0%と最も多く、被害率では40代が18.6%と特段に多くなっており、男性とは異なるパターンが認められる。やはり女性特有の労働力率のMカーブに起因するものが多いと思われる。

 学歴別では、大卒以上の受苦率が最も低いが、被害率は特に低いわけではない。雇用形態別も、受苦率は正規雇用者が非正規雇用者よりかなり高いが、被害率では正規雇用者の方が高いがそれほど大きな違いはない。なお、雇われていない非雇用型で受苦率、被害率が少ないのは当然だといえよう。

 また、企業規模的には、中小企業より300人以上の大企業の方が受苦率は低まり、大企業の方が行儀が良い職場である傾向が認められるが、被害率では、大企業の方がやや低いがそれほどの違いは認められない。

 なお、小規模企業のうち1〜4人の場合は、おそらく家族的は雰囲気の中で、受苦率、被害率とも特段に低いが、5〜9人になると、むしろ、被害率が企業規模の中で最高となるなど職場環境にかえって難しいところがあらわれるようだ。

 職種別には、管理職、保安職、生産工程職では、受苦率、被害率ともに低い傾向にある。生産工程職の数字は、工場の現場の実態をあらわすと考えられるが、もっと荒々しいと思っていたのであるが、案外と、おとなしいようだ。

 地域別には、北海道・東北や九州といった遠隔地の職場で、受苦率、被害率(特に被害率)が高いといった印象である。

(2018年9月25日収録)


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