新入社員の会社選択の動機を探った意識調査(公益財団法人日本生産性本部が継続実施)によると、「会社の将来性」とこたえるような「会社」に惹かれる人の割合が低下し、「能力・個性がいかせる」「仕事がおもしろい」「技術が覚えられる」といった「職」に惹かれる人の割合が高まってきている。

 すなわちかつての「就社」意識は「就職」意識にとって換わられた。という論調にそうデータとして国民生活白書(2007年、現在廃刊)などで引用された。

 会社と自分との関係について、かつての「会社に貢献することによって自分が成長する」という考え方から「自分が成長することによって会社にも貢献できる」という考え方に変化したといってよい。

 もっとも、同じく新入社員に対する別の意識調査によると、一生同じ会社で勤めるという若者が大きく増え、能力や技能を生かして独立しようという意欲のある若者は激減している(図録3184)。すなわち実態としては「就職」というより「就社」になっているという皮肉な結果となっている。

 近年の動きを見ると「就社」から「就職」へとは少し矛盾している。

 「就職」の1要素である「技術が覚えられるから」の割合は特段高まっておらず、むしろ低下しているので、「就職」意識が高まってはいないという見方もできる。

 また、「会社の将来性」がどんどん低まってきたのは、就社意識の低下ではなく、単に、どんな会社でも将来性は分からないと言う「不確実性の社会」観のあらわれであって、「就社」意識が低まった訳ではないという見方もできる。

 さらに、以前はごく少なかった福利厚生施設の充実についても、もっとも重視する新入社員が5%を越えるに至っている。

 すなわち、「就職」から「就社」への転換などは起こっておらず、「能力・個性がいかせる」や「仕事がおもしろい」の割合の高まりは、単に、明日のことは分からないのであるから、毎日、楽しい会社生活を送れればよいと言う考え方が強まってきているだけと解釈することも可能であろう。

(資料)
・内閣府「平成19年版国民生活白書」データは付表
・公益財団法人日本生産性本部「新入社員「働くことの意識」調査結果」
 (「調査研究」ページから「新入社員」で検索するとpdfファイルが得られる)

(2009年12月11日収録、2010年2月5日資料記述追加、2010年9月29日更新、2012年4月24日更新、11月10日更新・内閣府資料訂正、2013年7月2日更新、コメント追加、2014年9月14日更新、2015年8月25日更新、2016年7月8日更新、9月27日更新、2017年6月27日更新、9月6日更新、2018年7月14日更新、2019年8月2日更新)


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