図録2990では社会貢献意識の高まりとされる意識変化を見た。ここでは、この社会貢献意識の内容を探るため、NHK「日本人の意識」調査により、社会的活動と関連のある4つの問における社会活動への参加意識の推移を見た。

 NHKの放送文化研究所では1973年から継続して5年おきに、全国の16歳以上の国民5,400人に対する「日本人の意識」調査(個人面接法による)を行っている。刊行されている報告書は「現代日本人の意識構造 (NHKブックス)」。

 この調査は基本的に選択肢から1つを選んで回答させる方式を取っている(択一回答)。ここで取り上げた社会活動と関連のある4つの問に関しても同様である。例えば、現在の余暇活動として、「世の中のためになる活動」を回答した人は、”主として”その活動を行っている者であり、当然、回答率はそれほど大きくはならない。この点に注意して以下を読んで頂きたい。

 よく調べてみると、社会活動意識は低下しているとしか見れない結果もある。生活目標として、「みんなと力を合わせて、世の中をよくする」という回答を選んだ者は1973年時点では14%近くいたが、1988年までに7%以下に急落し、その後、横ばいであったが、2008年以降には6%以下、2018年には5%以下まで低まった。

 さらに余暇活動として現在、社会活動をしていると回答した比率は、この40年間ほとんど変わらず2%以下である。

 一方、余暇活動で将来は社会活動をしたいとする比率は1980年代までよりは上がっているが、9%台でほぼ横ばいを続けた後、2013年には8.0%、2018年には6.2%に下がっている。

 社会活動意識が明確に上昇していると見られるのは、理想の仕事として、「世の中のためになる仕事」を選んだ者の比率であり、2013年には8.8%にまで高まった。企業の社会貢献やいわゆるソーシャルビジネスへの関心は高まっていたといえよう。ところが、2018年は8.7%とやや低まり、上昇傾向が止まっている。

 無償や余暇で社会活動をするのはキツイが、給与をもらいながら社会にも役立てればそれに越したことはないという考えが広まってきていたが、それにすら関心がなくなっている現状である。

 人々の間に衰えながら薄く広がる社会貢献意識をどれだけうまく集めて力に出来るのかが問われているのかもしれない。

(2010年5月10日収録、2014年5月20日更新、2019年1月9日更新)


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