これまでにない出生数の減少、出生率の低下を受け、少子化対策の重要性、緊急性が高まっており、2023年の年頭に岸田総理が打ち出した「異次元の少子化対策」の中身に関心が高まっている。

 統計数理研究所の「日本人の国民性調査」では、最新2018年の調査では、少子高齢化の進行に伴い、これから日本が優先すべき政策について、?「高齢者のための政策が多少後回しになっても,子ども優先の政策を充実させるべきだ」か、それとも「子どものための政策が多少後回しになっても,高齢者優先の政策を充実させるべきだ」か、という設問で尋ねている。

 ここでは、この設問に対する?「高齢者のための政策が多少後回しになっても,子ども優先の政策を充実させるべきだ」とする回答についての男女年齢別の結果を、男女差に着目した図と年齢差に着目した図の両方で掲げた。

 統計数理研究所が結果報告で作成した図は年齢差に着目した図であり(ここでの第1図)、これを見ると男女とも年齢層が低いほど、子ども優先の政策を充実ささせるべきとの考え方を持つ人の割合が多いことが分かる。特に小さな子どもがいる場合が多い女性20代ではこの回答が88%と非常に高くなっている。

 それにしても全体計で68%、またすべての男女別の年齢層で50%を越えており、これまでの高齢者優先の政策を見直すべきだという意見が年齢を問わず強くなっていることがうかがわれる。

 なお、男女別では、男性が71%であるのに対し、子育てにより敏感であるはずの女性の方が65%とむしろより低くなっているのが目立っている。

 その理由を明らかにするためにも、次に、男女差に着目した図(第2図)を見てみると少し違った角度の状況が見て取れる。

 すなわち、男性の場合は小さな子どもをもっている可能性の高い30代で最も高い「子ども優先」の志向がだんだんと加齢に伴って低くなるのであるが、女性の場合は、30代〜50代で一気に「子ども優先」の回答が下がり男性を大きく下回ってしまう。そして50代では、60代や70歳以上よりも低くなってしまうのである。

 これは、女性の30代〜50代では、自分や夫の老親のケアや介護を強く意識しなければならない場合が増え、高齢者対策が後退すると自分の負担が大きくなる可能性が増すと感じているためと考えられる。男性がその点を余り感じていないのがむしろ奇妙だといえる。

 男性計と女性計の値を比較すると、子育てにより敏感であるはずの女性の方が低い値なのは、高齢者介護への女性の課題意識が男性を上回っているからだと見なすことができる。

(2023年3月25日収録)


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