体感治安の指標としては、意識調査における「住んでいる地域で夜ひとりで歩くのが安全と感じるか」の割合が参照される。OECD全体で「生活の安全」については改善が見られるが、体感治安も向上している。図録データの資料となったOECD報告書はこう述べている。「OECD諸国では全体として、他殺率は2010年の33%下落しており、交通事故死亡者数も20%以上減っている。「住んでいる地域で夜ひとりで歩くのが安全と感じるか」の割合も2006年の66%から2020年に74%へと高まっている」。 このように安全になっているとはいえ、もう1つの問題は、国民各層で格差が生じていないかどうかである。その点のチェックデータとして参照されているのが今回取り上げた体感治安の男女差の指標である。 OECD平均では男性は10人のうち8人は安全と感じているが、女性は10人のうち6人がそう感じている。女性の体感治安は男性の79.9%に過ぎない。2006〜13年には74.2%だったのこの点のジェンダーギャップはやや縮小しているが、なお、大きい。 各国の状況を図で見てみると、男女差が大きい国としては、オーストラリア、ニュージーランドといったオセアニア諸国が目立っている(だいたいの値では、男性の80%が安全と感じているのに女性はそれが50%に過ぎない)。 一方、男女差が小さい国としては、英国、オーストリア、スペイン、スイスなどが目立っている。日本は78.3%とOECD平均よりやや男女差が大きくなっている。 主要先進国であるG7諸国の男女差の大きい順位は以下である。 1.米国、74.4% 2.日本、78.3% 3.カナダ、79.1% 4.イタリア、81.3% 5.ドイツ、84.5% 6.フランス、88.3% 7.英国、93.6% 過去との比較では、おおむね各国とも体感治安の男女差は縮小の方向にあり、特にイタリア、フランス、英国の縮小が目立っている(日本は72.0%から縮小)。 一方、メキシコ、コロンビアといった麻薬戦争で名高い国では、むしろ、男女差が広がっているのが印象的である。 (2022年3月6日収録)
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