まず、見合いによる結婚は、1930年代には7割近く、1950年代後半にも、まだ過半数を占めていたが、その後、大きく減少し、2000年以降は5〜6%と少数派となっている。ただし2015年以降は再度やや増加している。 見合い結婚に代わって、伸びたのが、恋愛結婚であり、1970年代には半分以上に達し、現在では9割弱を占めている。特に、職場や仕事を通じた恋愛結婚、すなわち、職場の上司の紹介などで交際を始めるといった形態が伸びたが、この形態も1990年代前半をピークに、最近は、減少している。 この結果、友人・兄弟・姉妹を通じて交際を始める恋愛結婚が多くなった。 しかし、近年の大変化は、ネット経由による出会いの拡大である。SNSやウェッブサイト、マッチングアプリなどを通じて出会い、結婚に至るケースが1割を大きく越えているのである。見合い結婚の増もネット事業者がアレンジするお見合いのケース増である可能性があろう。 ネット婚は見合婚に類似しているが親族など第3者の仲介によらず本人たちの自発的なお見合い希望による出会いを経由した結婚である点が異なっており、第3のジャンルが登場したとも言えよう。 内訳を詳細な分類による下図で見てみると、ネット経由の他、学校、サークル活動、街なか・旅行先、アルバイト先などが多い。お見合い結婚に含まれる結婚相談所は1%前後と少数派である。結婚紹介業はその他に入っている可能性もある。 社会人類学者の中根千枝によれば、エクソガミー(同一血縁集団の成員同士の結婚を避ける習慣)の社会では親しい同士の結婚がきょうだいとの結婚のように感じられて一般に避けられる傾向にあるが、日本の場合はエクソガミーがなかったため、もともと同一村落内の結婚が多く、それが近年になって友人の妹との結婚や職場結婚が多い理由となっているという。 「エクソガミーを伝統的にもたなかった日本人は、友人との関係をいっそう濃くし、たしかにする方法として、むしろ、友人の妹との結婚を歓迎します。事実、私たちのまわりには、ずいぶん友人の妹さんを妻としている人たちがいます。 このことは、日本に職場結婚が多いことにもつながります。これは統計を出したわけではありませんが、他の社会、すなわち中国・インドだけでなく、欧米と比較しても、日本は職場結婚が圧倒的に多いようです。かつての村内婚が、現代では職場結婚としてあらわれているわけです。(中略)これはいうまでもなく、さきに述べたように、日本人の中に「近い人をさける」という意識がないからです。その反対に、近い人をすぐ好きになる傾向があるようです。それに各人がもっているネットワークがせまく、つき合いが職場に限定されがちなところからくるものと思われます」(中根千枝「家族関係を中心とした人間関係」講談社学術文庫、1977年)。 そして、日本社会は、もともと見合い結婚が中心だったわけではないという。 「見合いというのは、伝統的な村のばあいでは、村のなかにつり合う家が少なく、どうしても他の村に候補者をもとめる必要から起こったものと考えられます。したがって、見合いのケースは、村では、どちらかというと上層に向かって多く行われてきたといえましょう。村によっては、ほとんどの家が同じ位の経済・社会水準であることがあり、そうした村々では、見合いよりも、本人や友人たちによって相手がきまることが少なくなかったのです。ですから、見合い結婚が古くて、恋愛結婚が新しい形式だなどとは、単純にいえません」(同上)。 少し古いデータであるが結婚(同棲)相手との出会いのきっかけについての国際比較データが見つかったので、参考図として下に掲げた。中根千枝の言うとおり、日本の特徴は職場結婚が多い点にある。「友人・きょうだいを通じて」はいずれの国でも多いが、「友人の妹」との結婚を意味するかどうかは分らない。この他の特徴としては、欧米では「同郷と言うことで」が多く、韓国では「親・親戚の紹介で」が多く(見合い結婚に当る)、フランスでは「幼なじみ・隣人関係」が多く、また、米国では、学校関係が特に多い(米国のテレビの学園ドラマで学生カップルが頻出するがそうした伝統があろうのであろう)。 さらに参考図には、望まれる出会いについてきいた最近の国際比較調査の結果を掲げた。海外では日本以上にネット経由のシェアが大きくなっていることが分かる。
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