以下のような、いろいろな点に気づかされる。原データが掲載されている筒井淳也「結婚と家族のこれから」光文社新書(2016)は、このうち、@とA、およびCの一部について、ふれている。 @母親が同居していない無配偶の場合(すなわち独身ひとり暮らしの場合)、条件が同じなのに、夕食の用意でも家の掃除でも、男女の差が大きい。
夕食の用意の場合、男性が外食に頼りがちなのに対して、自炊による倹約、食事の質、健康考慮、結婚後の家事準備といった理由で、女性の方が手づくりにこだわる状況がうかがえる。食事の質や健康といった側面で、結婚後、男性が外食でよいと思っても、女性と意見が合わなくなる可能性も生じる。 家の掃除の場合、倹約や将来準備の要素は少ないだろうから、男性より女性の方が清潔好きという理由が主だろう。こちらも、結婚後、男性が汚くないだろうといっても女性とは意見が食い違う可能性が強くなる。 A母親同居の独身男性の家事頻度と有配偶男子(母親同居・非同居とも)の家事頻度はほぼ同一。
日本の男性にとって妻は母親の代わりという側面が感じられる。 B女性が家事をあまりしないのは母親同居の独身時代のケースのみ。
C母親が同居していない場合で、結婚後、男性は、夕食の用意も、家の掃除も、家事をしなくなるのに対して、女性は、家事をする頻度がやや増加する。
女性からすれば、せっかく結婚して家事を分担しあえるようになるかと期待していても、かえって、家事は増えるという状況。もちろん、子どもができて子どものための分の家事が増えたという要因も働いているだろうが。 男女のこうした不公平を無視すれば、男女の家事労働の合計が減るというメリットが結婚によって生じることになる(頻度と量が比例しているとすれば)。 D母親と同居の独身どうしから母親と同居しない夫婦への移行の場合(典型的なケース)、男はわずかに家事が増えるだけだが、女性の場合は、約3倍と顕著に増加する。
E有配偶男女の家事頻度は、母親が同居していても、していなくても、そうは変わらない。 妻の家事頻度は、婿養子のケースなど自分の母親との同居なら、しないよりはかなり減るだろうが、夫の母親との同居だと、嫁姑の関係もあり、そう簡単には家事を減らせないことを示しているのであろう。 (2017年3月16日収録)
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