26カ国を対象にした2006年調査については、結果を上に示した。頻度の世界一がギリシャで、日本は最下位である点、また、南欧、東欧の頻度が高く、南欧の満足度が低い点など、41カ国を対象とした2005年調査結果との共通点も多い(ただし、頻度について2005年は年間回数、2006年は週1以上割合で示しているという差がある点には注意が必要である)。 新知見としては、2005年には対象でなかったアフリカの大国ナイジェリアについて、頻度がかなり低い割には、満足度が世界一である点などが目立っている。 2005年調査の結果と異なる特徴としては、アジア諸国の頻度は中国、マレーシアなどに見られるように欧米と遜色がない点、欧米の中では米英、カナダ、オーストラリアなど英語圏の頻度が相対的に低い点などに気づかされる。 2006年調査の良いところは、調査方法についてもDurex社によるコメントが得られる点である。これについては本ページの末尾に転載した。 朝日新聞の現地特派員報告による連載特集記事「いいね!世界イチ?」の2014年1月1日掲載分は「愛の超大国を襲った「悲劇」」と題してギリシャのセックス頻度世界一をめぐる話題を取り上げている。 ギリシャの世界一は、ギリシャ人自体も自負していることが現地の取材を通じて分かった点が興味深い。朝日新聞デジタル版(2013年12月31日)から引用すると以下の通り。 「アテネ。まず「世界一」の感想を女性に聞いた。 夫婦問題を扱う弁護士ステファニア・スリさん(42)は「私見だけど、ギリシャ人は情熱的だし、男性はベッドの中では世界一、と昔からいいますから」。 保健省のクリスティーナ・パパニコラウ公共福祉局長も認めた。「この国にはとてもよい自然と気候がある。特に夏には、自然とそういう雰囲気になる」 最近は「シエスタ」(昼寝)の習慣こそ廃れたものの、朝早くから働き、夕方早めに仕事を終える。自宅に戻り、仮眠やシャワーの後、涼しくなった夜に外出したり、夕食をとったりするのが常だという。なるほど。強い日差しが照りつける夏が、暑い昼を避け、夜遅くまで元気な生活リズムをつくったのか。 また、とりわけ男性は性におおらか。ギリシャ男性に嫁いだ日本人女性は「親族での会食で『精力のつくものを食べたから今夜は頑張るぞ』なんて言い出して。恥ずかしかったわ」。」 同紙は、ギリシャのこの世界一の座は、財政危機の直撃で、今や、保持不能となったことも紹介している。下表のように37カ国を対象とした2011年の調査では、コロンビアが首位に初登場、ギリシャは何と11位に転落している。 セックス頻度国別ランキングとその推移
(資料)朝日新聞2014年1月1日 「ギリシャ性行動研究協会会長のコスタス・コンスタンティニディス医師は不安を隠さない。「デュレックスの調査は正しい。我が国の夫婦生活は、悲劇的な状況に陥っている」 13年夏、男女計1千人を対象に協会が行った電話調査では「夜の営みが減った」と答えた人が34%。会長の泌尿器科医院では、性的不能で診察を受ける男性が、かつての倍になった。 世界一の国が、なぜ。 「男たちは一家の大黒柱として働き、夜は夜でがんばってきた。それが不況で仕事を失い、誇りも失った。若者も先が見えない」ギリシャでは09年、巨額の財政赤字が発覚。ユーロ危機を招き、厳しい緊縮策で景気は冷えこんだ。デュレックスの調査があった11年の成長率はマイナス7.11%。いま若年層の失業率は65%に達する。会長は言う。「社会全体が萎え、立ち上がれなくなっている」 では、世界一だった06年ごろはどうだったのか。 「バブル景気で、みんなハイになっていたわ」。精神科医のバシリキ・リアフォウさんはこう言う。01年のユーロ導入で、ギリシャは好況を迎えた。04年には五輪もあった。外国のお金が市場に流れ込み、輸入品が街にあふれた。06年の成長率は5.51%。高揚感の中で、質素だった庶民の暮らしも変わった。「現代の物質社会では、お金こそが媚薬なんです。いま薬は切れた。夜を楽しむ余裕も情熱も持てない」 ギリシャ・アメリカン大のシメオン・マグリベラス教授(文化人類学)も「90年代から経済危機が起きるまでが、この国の男女が最も自由を満喫した時期でしょう」と言った。 ギリシャ人が、世界で最も多く愛を交わした時期。それはユーロというかりそめの「翼」を得て、人々が神々の享楽に最も近づいた時代だったのか。「そういうことでしょう」。教授は寂しげに視線を落とした。」(同上) 日本人がバブル景気の時期に、低下傾向を続けている血圧や塩分摂取量が、一時期、上昇し、自殺率もこの時期低下していたことを思い起こさせる(図録2758参照)。 プリント版にはないが、朝日新聞デジタル版には同時掲載された「取材余話」も興味深い。 「弁護士も、官僚も、精神科医も。ギリシャ女性はみな口をそろえて言った。 「ギリシャの男性は、ベッドの中では世界一」 それは、まるで「日本の科学技術は世界一」と同じように、国民みんなが信じる「神話」のようだった。その神話が打ち砕かれ、男性の喪失感は日本人が思う以上に深刻なようだ。(中略) 経済危機で、仕事も誇りも失った男たち。政府男女平等局の担当者によると、ドメスティック・バイオレンス(DV)の深刻度が増しているという。そもそも、男女あわせての調査とはいえ、年164回なんて、男性の自己満足ではないのか。ギリシャは他の欧州連合(EU)諸国に比べて男女平等が遅れている。女性は逆らえず、虐げられているのでは…。東京で話を聞いた作家の北原みのりさんは、ギリシャをはじめとする地中海諸国の性について「北欧などに比べて、男性側の視点がより強いように思う」と話した。「デュレックスの調査の結果も、回数が多ければいい、という男性の思い込みがやはり反映しているのでは」と感じるという。」 欧州債務危機の発端となったギリシャについてはシャドーエコノミーの大きさがこれと関連して指摘されていたが、この点については図録4570参照。 デュレックス社2006年調査の概要
(2014年1月6日収録)
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