住宅の十分な広さを定義する国際的に合意された基準はないが、EUは狭小住宅(overcrowding)の基準として以下の最低限が確保されていない状態としている。

・1家族に1部屋
・夫婦に1部屋
・18歳以上の独身者1人に1部屋
・12〜17歳の同性2人に1部屋
・同性でない12〜17歳1人に1部屋
・12歳未満の子供2人に1部屋

 ざっくり言うと、狭小住宅とは1夫婦1部屋あるいは未婚者1人1部屋という最低水準が確保されていない住宅となろう。

 EC(ヨーロッパ共同体)が昭和54年(1979)に出した内部資料「対日経済戦略報告書」中の”rabbit hutch”の訳語として「うさぎ小屋」が使われ、以後、これが日本人の粗末な小さい家を示すものとして自嘲をこめて流行語化した。

 図は、OECD Affordable Housing Databaseによる各国の狭小住宅割合を示したものである。住宅問題は平均的な世帯の水準もさることながら、貧困層の住宅事情が劣悪ではないかが特に関心の的となる。そこで所得区分ごと、特に貧困層のデータが図には掲げられている。

 所得区分は税控除後の純所得ベースの所得五分位別であり、図には平均とトップ20%、ボトム20%の3つを掲げた。データの制約からチリ、コロンビア、韓国、トルコ、米国は総所得ベース、また英国は地方税や住宅手当を含まない純所得ベース。日本はデータが世帯レベルでなく、回答者レベルでのみ得られるため家庭数割合でなく人口割合。

 ボトム20%(下位20%)が貧困層であるが、図における国の並びは貧困層の狭小住宅割合の高い方からである。

 この値が最も高いのはメキシコの43.6%であり、コロンビアが41.6%で続いている。メキシコとコロンビアでは貧困層の4割以上の者が1部屋を確保できていないのである。

 下位20%の狭小住宅割合は、OECD平均では16.4%(計では11.2%)であるのに対して、日本の場合は2.8%(計では1.6%)であり、順位的にも下から4番目で住宅困窮者は貧困層でも少ないという結果となっている。部屋数からいうと日本の住宅は「うさぎ小屋」とはとてもいえない恵まれた状況にあると判断できよう。

(2024年11月16日収録)


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