一戸建てに住みたいか、集合住宅(マンション、アパート)に住みたいか、住みたい地域は都市部か郊外か田舎かについての国民意識の国際比較を見てみよう。

 イプソス社が行った「住宅モニター調査」では調査対象30カ国から望ましい住宅環境は何かについて聴いている。その調査結果を帯グラフで掲げた。

 一戸建て住宅志向はさらに郊外(suburbs)、田舎(rural area)、都市部(city)の3区分、マンション志向(アパート等を含む)は都市部と郊外の2区分で意向を聞いている。

 この5区分のうち、「郊外のマンション」が最多の国はないが、その他の4区分は、それぞれ最多の国があり、4区分ごとに地域的な特徴があらわれている。

 日本を含む4か国は、都市近郊だが空間のゆとりのある「郊外の一戸建て」が最多である。日本以外はオーストラリア、ニュージーランド、南アフリカが該当している。

 日本の結果は「郊外の一戸建て」が36%であり、これに「都市部のマンション」が19%、「都市部の一戸建て」が15%、「郊外のマンション」が12%、「田舎の一戸建て」が6%となっている。「田舎の一戸建て」が韓国と並んで最低レベルであるのが特徴だが、農家を連想させるからか。「都市部のマンション」が2番目に多いのは、最近のタワーマンション・ブームが影響しているからだろう。

 欧米諸国は、イタリア、スペインを除いてすべてが「田舎の一戸建て」が最多である。この区分を選んだ者がフランスでは40%に達している。ヴィラまたはヴィッラ(villa)と呼ばれる贅沢な上流階級のカントリー・ハウスは古代ローマが起源であるが、欧米諸国ではそれを理想とする文化的な伝統意識があるように感じる。


 「都市部の一戸建て」が最多の国は、不思議なほどアジア、中南米の途上国で占められている。こうした国では都会の混雑や大気汚染は余り気にせず、都市部の御殿に住みたい志向があるらしい。

 最後の「都心のマンション」が最多の国は6カ国とそう多くない特定の国々である。南欧のイタリア、スペイン、そしてアジア新興国の韓国、シンガポール、さらにトルコとハンガリーである。


 韓国の場合、「都心のマンション」への回答率が55%と対象国中唯一過半数を超えており、異例なほどの大都市高層マンション志向が背景にあると考えられる。

 シンガポールは都市国家なので「都心のマンション」志向が高いのは当然なのかも知れない。

 トルコは「都市部の一戸建て」も34%と高く、途上国的な都市志向が背景にあろう。

 ハンガリーは「郊外のマンション」も28%と高く、シンガポールと同様のマンション志向に特徴がある。シンガポールのような都市国家でもないのに何故そうなのかは不明である。

(2025年4月13日収録、4月14日補訂)


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