WHOの基準による「運動不足」(Insufficiently active)とは、成人について「通常の1週間に”軽い運動”(歩いたり自転車に乗ったりするような)が150分未満、あるいは”激しい運動”(走ったり泳いだりするような)が75分未満」というものである。この場合の運動は、健康エクササイズに限られるものではなく仕事や余暇・スポーツにおける身体の活動も含むものとされる。 世界的に調査を行ってみると、2010年に、18歳以上の成人の23%が運動不足だった。男女別には、男が20%、女が27%と女性の方が運動不足に陥りがちと指摘している。また、男と女の運動不足割合は、それぞれ、高所得国では26%、35%、低所得国では12%、24%となっており、高所得国では、座って行う仕事が多く、余暇の過ごし方が非運動系となり、また受動的な交通手段への依存が高くなることなどが運動不足割合の上昇をもたらしているとされる(以上、WHOのFact sheet No385による)。 国によって犯罪や交通で街歩きが安全でないという環境も、女性は家にいるべきだというような考え方とあいまって、特に低所得国の女性の運動不足が男性と比べて相対的に多い理由となっている。 図録には各国別の運動不足割合を掲げた(調査データのある146カ国のうちの当図録の選定による主要56カ国)。 一番運動不足の多いのはコロンビアの63.6%であり、これに、サウジアラビア、クウェートといった産油国、あるいはマレーシアや南アフリカが続いている。逆に最も運動不足が少ないのはネパールの4.1%である。 日本の運動不足は33.8%であり、グラフに掲げた主要55カ国のうちでは14位、調査対象国146カ国全体の中では33位である。G7諸国では、英国、日本、米国、イタリア、フランス、カナダ、ドイツの順で、37%から21%までのレンジとなっている。この中で、日本は、どちらかというと運動不足が多い国といえよう。男女別の運動不足割合順位では男が12位、女が22位なので男の運動不足の方が目立っている。なお、日本より若い平均的な国の年齢構成で再計算される年齢調整前の運動不足割合は下表の通り38.7%である。 日本の運動不足割合(2010年)
先進国の中では自転車大国オランダでは、運動不足割合が15.5%と最も低く、自動車大国の米国が32.4%とその2倍なのと好対照となっている(外出時の交通手段別割合を示した図録6370参照)。英国や日本がその米国をさらに上回っている点に注意する必要があろう。データは年齢調整されているので、日本の場合、そもそも身体を動かす活発な若者が少なく、動きが活発でない高齢者が多いという理由は当て嵌まらない。 同じ儒教圏に属する日本、韓国、シンガポールの値が近いことから運動不足には文化的なものが影響している可能性もあろう。 下には、調査対象国146カ国について、男女別の運動不足割合を散布図にプロットした。女性が男性と比較して一般に運動不足の割合が多い点が明解である。そうした中で、イラク、レバノンなどは男性の運動不足の方が多い点で目立っており、また産油国やバングラデシュなどイスラム国では、女性の運動不足が男性に比して特に目立っていることも分かる。 以下に冒頭の図録に取り上げた主要56カ国の計と男女別の運動不足割合を表で示した。 各国国民の運動不足割合(主要56カ国、2010年) 〜18歳以上の成人についての年齢調整後の推計値(%)〜
(注)主要55カ国の降順。ここで運動不足(Insufficiently active)とは、週に軽い運動(歩いたり自転車に乗ったりするような)が150分未満、あるいは激しい運動(走ったり泳いだりするような)が75分未満である場合を指す。
(資料)WHO(2015年11月23日収録、24日補訂)
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