文部科学省では学校保健統計調査によって児童生徒の身長体重等を古くから調べている(1900年から1939年までは「生徒児童身体検査統計」、1948年から1958年までは「学校衛生統計」)。ここでは、1910年から20年おきに、1世紀にわたる児童生徒の男女年齢別の平均身長の推移をグラフにした。また、第2の図には、年齢別の身長の伸びを掲げた。 全体的な傾向からみると、戦前から戦後、最近にかけて男女、全学年で身長が伸びてきた(図のほか下表参照)。ただ、1990年以降は、伸びの傾向は頭打ちとなっている。また、1950年は、戦中、戦後直後に、乳幼児だった児童生徒が多く、食料事情の影響もあって、戦前より身長が短くなる学年もあるなど、全体傾向からはやや逸脱していることが図から認められる。
小1でも高3でも10センチほど背が伸びている。ということは、明治期と比べ、戦後、小1の6歳までの乳幼児期の成長が著しくなったということを意味する。大澤清二・大妻女子大副学長(発育発達学)によれば「背景には乳幼児期の栄養の充実があるとみられる。身長が伸びれば、それに比例して脳をはじめとする体の機能の発達も早まっていると考えられる。大澤さんは「小学校の入学時期を1年早めてもよいのでは」と説く」(毎日新聞2017年1月19日) 学年毎の成長の早さにも時代によって変化が生じており、1910年と2010年との身長の差は、男子について、中2で20pを越えているが、小1や高3では、約10pである。女子にも同様の傾向が認められる(上表参照)。 また同学年男女の身長差は、女子の方が早い年齢で身長が伸びるので、小1から小6にかけて差が縮まり、再度高3にかけて差が大きくなる。1910年から2010年にかけてこの傾向は振幅が大きくなり、2010年では、小5、小6では、女子の方が男子より平均身長が高くなる一方で、高3では、かつてより2p以上、男子が女子を上回っている。 次ぎに、身長の伸びを男女学年別にあらわした第2の図であるが、全体的に、以下のように身長が伸びる時期が早まっている。 身長の伸びのピーク年齢 (男) (女) 1910年 中3 中2 1930年 中3 中1 1950年 高1 中1 1970年 中2 小6 1990年 中2 小6 2010年 中1 小5 1910年から2010年の1世紀の間に、身長の伸びのピークは、男子の場合、中3(厳密には中2から中3にかけて)から中1に2歳早まり、女子の場合、中2から小5へと3歳早まっている。 第2次世界大戦の影響下にあった1950年には、男子では、成長ピーク年齢が遅れるかたち、女子では成長ピーク年齢の成長幅が下がるかたちで、イレギュラーが生じていた。 年齢別の成長幅は、戦前及び1950年から戦後1970年以降とで大きく変化している。すなわち、男子では、中2までの成長幅が大きくなり、高校生では成長幅が小さくなっている。女子では、小6までの成長幅がかなり大きくなり、中2以上の成長幅はぐっと小さくなっている。こうした変化は、1950年から1970年にかけての我が国の高度成長期に一気に進んだ点が特徴である。1970年以降も同じ傾向が進んでいるが、進み方は、ぐっとペースダウンしている。 成長ピーク年齢の早期化と成長ピーク年齢以前の成長幅の拡大と以降の成長幅の縮小が合わさって、身体的成長の前倒し、早熟化が進んでいると総括できよう。 こうした身体的な成長パターンの変化は、いわゆる思春期の早期化ともリンクしており、思春期に対応して中学3年間を設けた6・3制の趣旨が崩れ、6・3制の見直しが必要との意見も出ている。 (2007年6月8日収録、2013年1月22日更新、2017年1月21日大澤氏見解、2019年1月25日表題等修正)
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