かつてテレビは目に良くないとさかんに言われたものである。いまはスマホが良くないとされる。 図には幼稚園児、小学生、中学生、高校生の裸眼視力1.0未満の比率の推移を掲げた。幼稚園児を除いて、2019年も最高値を更新し、スマホの影響をあげる報道がなされている。 児童生徒の視力は、ある時点を取ってみると、幼稚園児、小学生、中学生、高校生とだんだんと悪くなる。幼稚園児と小学生とでは余り変わりがないが、中学生に入ると急に悪くなる。時系列的にも、幼稚園児では2000年以降はほぼ横ばいであるが、その他の区分では悪化傾向が認められる。 1985年前後から10年間(バブル期と言っても良いだろう)で各区分で悪化が進み、特に中学生の悪化のテンポが大きく、近視の割合は高校生にかなり近づいた。この頃の視力悪化の原因は何だったのであろう?主因として指摘されたのは、テレビやゲームだった。上図のように、この時期は、同時にテレビゲーム、携帯用ゲーム機が若年層に浸透した時期に当っていたのでそう見なされたのである。 一方、テレビゲームは視力悪化の主因ではなく、実は柔らかい食べものによる咬合力(歯を噛み合わせる力)の低下が視力低下の実態と符合するとの指摘もある。また、それ以外の要因として学習時間の増加や外遊び時間の減少を指摘する研究もある。 今では高校生の3人に1人が視力1.0未満である。1990年代後半から2000年代前半にかけて近視の割合が横ばいか低下の傾向となっていたが、最近、小学生以上で悪化のテンポが高まっている。文科省は「スマートフォンの普及や携帯ゲームの人気などで、子どもが近くで物を見る時間が増えていることが背景にあるのではないか」としている(東京新聞2018年12月22日)。 パソコンの普及が急速に進んだのは1995〜2005年頃であり(図録6200から下図を再録)、スマホの普及が急速に進んだのは2010〜15年頃である(図録6350から下図を再録)。パソコンは視力に影響しなかったがスマホは影響している疑いが濃いと見てよいだろう。 ただし、東アジア諸国における近視の進行の長期的なデータを下図に掲げたが、これを見ると子どもの近視はもっと前から進んでいたことが分かる。そうだとすると、ゲームやスマホではなく、英国エコノミスト誌がいうように暗い教室で勉強ばかりしていて、視力の悪化を防ぐ太陽光下での遊びが足りないことが視力低下の主因ということとなる。ゲームやスマホはそのものというより野外での運動の妨げとなるから視力低下を招くということになる。 (2019年2月13日収録、12月21日更新、2022年7月31日東アジアにおける近視の進行)
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