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結腸がんや乳房がんは国別の差が比較的小さいのに対して、その他のがんは国別の差が大きくなっている。 日本の値は、食道がん、肺がんでは6か国中最も高くなっている。また、胃がんでは2位、結腸がん、乳がんでは3位の値となっている。 食道、胃といった消化器のがん、特に胃がんでは、日本と韓国の値の高さが目立っている。食生活が関係しているかもしれない。 白血病(成人)の日本の5年生存率は最下位となっている。日本の場合、「白血病や悪性リンパ腫などの成人の血液がんや皮膚の悪性黒色腫は低かった。血液のがんは欧米と日本でタイプが違う可能性があるという」(毎日新聞2018.3.5)。 以下に「日本のがん5年相対生存率の把握例」を掲げたが、使用する5年生存率のデータによっては、ばらつきがあることが理解される。
がんの部位と対象国の拡大版データを原資料から採取し、表示選択で見れるようにした(2022.5.27)。 部位によって東アジアが特に成績が良いなどの地域差が見て取れるのに加え、先進国以外も含めると5年生存率の成績にかなりの国別差があることも分かる。 原資料には18部位のがんデータが記載されているが、各部位の国別順位を平均した値で、図で取り上げた13カ国の国別の成績ランキングを計算してみると以下である(カッコ内は部位別順位の平均)。 (1)オーストラリア(3.5位)、(2)米国(3.6位)、(3)日本(4.2位)、(4)ドイツ(4.4位)、(5)韓国(4.6位)、(6)イタリア(6.1位)、(7)シンガポール(6.8位)、(8)英国(7.1位)、(9)中国(8.3位)、(10)ポーランド(9.3位)、(11)ブラジル(10.0位)、(12)ロシア(10.8位)、(13)タイ(12.2位) 日本の成績は世界トップクラスであるが、トップではない。旧白人植民地であるオーストラリアや米国の成績が特に良いのも、医療の発達もあるだろうが、民族的な差異も感じられる。ブラジル、ロシア、タイといった途上国や体制移行国での成績の低さはやはりがん健診普及度の低さや医療体制や医療保険の未整備によるものだろう。 このデータを参照している国立がん研究センターがん対策情報センターの松田智大氏(原資料の作成者の一人でもある)の記事によれば以下のような点が指摘されている(医学会新聞、2018.04.16)。 日韓で消化器系のがんの成績が良い「背景には,早期発見や集約的診断,内視鏡下手術の優れた技術があると考えられている」。 逆にアジアの成績が悪いがんもある。 「皮膚悪性黒色腫は世界全体では60〜90%の範囲で分布していたが,アジアでは非常に予後が悪い。アジアでは皮膚がんの症例数が少ないため発見が遅れがちであること,皮膚悪性黒色腫の中でも予後不良な傾向がある末端黒子型黒色腫の割合が欧米と比べて高いことも原因と想定される。成人骨髄性疾患の生存率は世界全体では30〜50%の範囲で分布していたがアジアでは極めて低く,日本でも33.3%であった。成人リンパ性疾患も同様に,観察期間中の向上はみられたものの,世界の40〜70%に対し日本は57.3%であった。このような地域間での差は,医療の質だけではなく,がん種などの差とも考えられる。また,日本のデータが,予後不良の血液がんが多い地域のがん登録データに偏っていることも原因の一つではなかろうか」。 なお、松田氏は。5年生存率の算出法にも言及している。生存率には一般の人口の年齢別死亡率をキャンセルする相対生存率が使用されるが、「近年,がん死と非がん死の非独立性による過大評価(非がん死リスクが高い患者は同程度がん死リスクも高く,早々にがん死亡で生存率算出対象より除外されてしまうバイアス)を修正する方法が考案され,「純生存率(net survival,がんを唯一の死因とする偏らない値)」が推計されるようになった」。この手法がこのデータには適用されているという。 (2010年1月4日収録、2013年11月18日・19日更新、2018年3月5日新データ、旧図録は図録2166dで保存、2022年5月27日全部位・拡大対象国のデータを表示選択)
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