日本ではがんで亡くなる人が最も多く(死因別死亡率は図録2080参照)、人口10万人当たりのがん死亡率も世界でもっとも高い。このため、がんは日本人が特に罹りやすく、死に至ることが多い怖い病気だと誤解している人も多い。

 しかし、これはそもそも高齢者はがんで死ぬ人が多く、日本の高齢化は世界トップだからそう見えているに過ぎない。この図録では、高齢者比率の高さで多くなっている分を除いた年齢調整がん死亡率で各国比較したデータを掲げたが、これを見れば日本のがん死亡率はそう高くないことが分かろう。なお、ここでの年齢調整死亡率は年齢別死亡率をOECD平均の年齢構成で加重平均した値である。

 対象国の中で、がんの年齢調整死亡率が最も高いのはハンガリーであり、クロアチア、スロバキア、スロベニアといずれも東欧の国がこれに続いている。

 主要先進国(G7諸国)の中では英国が最も高く、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、米国と続き、日本は最も低くなっている。日本は同じ年齢層であればがんで死ぬ人が最も少ない国なのである。

 対象国の中で最低はメキシコであり、トルコ、ペルー、韓国、コスタリカと続いている。

 なお、図には男女の値も示したが、すべての国で男性のがん死亡率が女性を上回っている。

 さらにもう1つの図では、主要国について、年齢調整を行う前のがん死亡率(粗死亡率とも言う)と年齢調整がん死亡率の推移をそれぞれ掲げた。後者は各国だけでなく、各年次で対象国の年齢構成が変わらないと仮定した場合のがん死亡率であり、高齢化の影響がキャンセル・アウトされている。

 がんの粗死亡率は日本と韓国で特に上昇が目立っており、英国、フランスはほぼ横ばい、米国はむしろ低下傾向にある。

 年齢調整がん死亡率の推移はいずれの国も低下傾向にあり、遅れて先進国化し、がん検診やがん治療など保健医療体制なども急速に充実させた韓国では特に低下傾向が著しい。

 各国の高齢化の進み具合が異なるため、こうした年齢調整がん死亡率の低下にもかかわらずどれだけが粗死亡率が上昇したり、横ばいややや低下するかなどの差が生じる。日本と韓国のがん粗死亡率が上昇傾向をたどっているのは、この両国ではがん克服の歩みを上回るほど高齢化の進み具合が大きいからと見なせるのである。

 冒頭図の対象国は、図の順にメキシコ、トルコ、ペルー、韓国、コスタリカ、コロンビア、スイス、ルクセンブルク、日本、アルゼンチン、イスラエル、ブラジル、フィンランド、チリ、米国、スペイン、アイスランド、スウェーデン、オーストラリア、南アフリカ、オーストリア、ベルギー、カナダ、イタリア*、ドイツ、ノルウェー*、ギリシャ、フランス*、ポルトガル、ブルガリア、オランダ、チェコ、ニュージーランド*、英国、リトアニア、エストニア、デンマーク、ルーマニア、アイルランド、ポーランド、ラトビア、スロベニア、スロバキア、クロアチア、ハンガリーである。

(2024年5月6日収録)


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