人口当たりの患者数は一般に受診率と呼ばれ、従来から、厚生労働省の患者調査によって調査されている。この結果を図録に示した。 受診率の推移は医療機関の充実や医療保険制度の動きによって大きく影響されている。 受診率は第一義的には医療アクセスの容易さをあらわすものであるが、戦後医療機関の充実や医療従事者の増加、さらに1961年の国民皆保険開始、1973年福祉元年の老人医療無料化などによって、外来、入院ともに戦後大きく上昇した。外来は1975年をピークに、入院は1990年をピークに横ばい、あるいは下落に転じた。こうした横ばい、あるいは下落に転じるきっかけとしては、健康保険の自己負担増、老人保健の一部自己負担化及び負担額増などが大きな影響を与えている。 受診率の動きはかつては医療アクセスの改善指標であったが、近年では過剰診療の抑制指標として見られる傾向が高まっている。 年齢別に受診率を見ると、保健医療の充実によって35〜64歳の受診率は1970年以降は入院、外来ともに低下傾向を辿っている。受診率全体の動きは、65歳未満層より受診率が相対的に高く、また、ますます患者の中でのシェアを高めつつある高齢者の受診率によって決まる程度が高まっている。65歳以上の受診率は、入院も外来も1965年頃はそれほどの差がなかったが、それ以降、入院では、1980年まで、外来では、1975年まで急激に伸長した。その後、入院は1990年まで緩やかに上昇し、その後、一貫して下降線を辿っており、外来は1993年まで横ばい、1996年に上昇、その後下降傾向に転じている。 こうした動きには、治療費、入院費などの医療費単価の動きとともに、老人医療費の自己負担増の動きが大きく影響していると考えられる。こうした近年の65歳以上及び65歳未満双方の受診率の低下の結果、受診率の相対的に高い高齢者の増加にも関わらず、全体の受診率は、現在までのところ、上昇していない。従って、近年の1人当たり医療費の増大は、患者1人当たりの医療費増によっているものと考えられる。患者1人当たりの医療費増は、高齢化の進展により、若年・壮年層に比べ相対的に高額な高齢者医療費のシェアが大きくなっているためである。 国民医療費の伸びの要因分解については図録1902参照。 (2006年12月8日更新、2007年2月10日田中隆史氏の指摘により1人当たり医療費の増大の要因説明を是正、2015年10月4日更新、2015年12月18日更新、2020年10月21日更新)
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