インフルエンザは、予想以上に超高齢者に偏った死亡リスクを有していることを図録1955jで示した。そこで、こうした特徴が、以前からのものなのか、それとも最近になって目立ってきている特徴なのかを見るため、2000年以降の年齢別のインフルエンザ死亡数の推移を追った。

 図を概観すると、近年、インフルエンザによる死亡数が不気味な増加傾向をたどっていることが分かる(より長期の推移は図録1955参照)。年齢別には、高齢層での死亡がますます目立つようにはなってきているが、従来から75歳以上の高齢層でリスクが高かった構造自体は変わっていないようだ。

 インフルエンザによる死亡数の増加傾向の要因としては、高齢層の増加が大きいのではないか考えられるが、実際、どの程度が高齢層拡大による寄与なのかについて、2番目の図にデータを示した。

 一般に、時系列比較や地域間比較では、人口の増減や大小によって左右されない指標として、10万人当たりの死亡数が、死亡率として、実数の死亡数に代わって使用される。自殺でも自殺率がよく指標として用いられるのもそのためである。
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 ここでも、年齢別死亡数の推移と関連して、インフルエンザ死亡率の推移を掲げている。2000年以降であると人口の増減はそれほど大きくないので、実数の動きと余り変わりはない。

 ここで注目したいのは年齢調整死亡率との差分の推移である。年齢調整死亡率は、もし、当初の年齢構成が不変であったとしたら、どんな推移をたどるかを年齢別死亡率から加重平均して計算したものである。これと普通の死亡率との差分の推移が高齢層拡大による要因効果と考えることができる。

 図を見てみると、2010年ごろまでは、高齢層拡大の要因は余り大きく影響していなかったが、それ以降は、死亡率増加の半分近くが高齢層拡大要因になってきていることが理解されよう。おそらく、団塊の世代が高齢化して、いよいよインフルエンザに弱い年齢層に達してきたからであろう。

 もちろん、こうした年齢要因だけでインフルエンザ死亡率が上昇している訳ではない。しかし、年齢調整死亡率で推移を追うと2018〜19年の値は、2005年のピークをそれほど上回っている訳でもない。従って、年齢要因を除けば、インフルエンザ死亡の増加は、単なる周期的な年次変動の範囲内と見なすこともできない訳でもないのである。

(2020年3月9日収録)


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