OECDの報告書は、指標として人口1000人当たりの退院患者数を採用している。ここで退院患者とは最低一晩病院を利用して退院した患者を指す(出生児、死亡退院を含む)。ただし当日退院を含めている国や出生児を含めない国もある。 この値は、発展途上国では病院の不足が解消されると上昇する。 先進国では、高齢化率(入院が必要な患者数)や患者の受け入れ能力、平均病床利用期間、通院で済ませるかどうか、入院治療の効率・効果など種々の要因で上下する。 タイムリーな退院は、入退院の流れを改善し、病床や医療従事者のムダを取り除くとされる。早すぎる退院も遅すぎる退院も診療結果を悪化させるとともにコスト増にむすびつく。早すぎる退院は再入院やコスト増を招く。遅すぎる退院は医療資源を枯渇させる。 もっとも退院患者数が多いのはドイツの252人であり、オーストリアの243人がこれに次いでいる。最も少ないのはコロンビアの33人、メキシコの39人である。主要先進国の中でもドイツとフランス、韓国は比較的多く、日本、英国、イタリア、カナダなどは少ない方である(米国のデータはない)。 日本は112人と対象となっている39か国中28位と退院患者数が少ない。 10年間の変化を見ると、OECD37か国の平均では153人から146人へと減少しており、減少している国も多い。入院の効率化が図られている結果の可能性があろう。 一方、中国、韓国、トルコなどでは値が増えているのが目立っている。経済発展に伴う病院不足の解消の可能性があろう。 日本の場合も値が増加しているが、これは、平均入院期間の短縮化にもあらわされている病院利用の効率化(図録1928)にもかかわらず、高齢化に伴い入院が必要な患者の人数が増えているためだろう。 なお、コロナ禍に見舞われた2020年のデータが暫定的も得られているケースについて出典となっている報告書は下のように報告している。
これらの国ではいずれも入院が大きく減少している。これは、医療機関がコロナ患者用の空きベッドを増やすため入退院患者を抑えたため、あるいは、患者がコロナ感染を恐れて入院を避けようとしたためだと考えられている。 対象国はOECD諸国とそれ以外の主要国計39カ国であり、図の順に、ドイツ、オーストリア、ロシア、リトアニア、チェコ、ハンガリー、スロバキア、ラトビア、中国、フランス、オーストラリア、韓国、スロベニア、スイス、ポーランド、トルコ、ベルギー、エストニア、フィンランド、ノルウェー、イスラエル、デンマーク、ルクセンブルグ、スウェーデン、ニュージーランド、ギリシャ、アイルランド、日本、英国、スペイン、イタリア、アイスランド、ポルトガル、オランダ、チリ、カナダ、コスタリカ、メキシコ、コロンビアである。 (2022年9月23日収録)
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