内閣府が行った「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」により高齢者の住宅についての国際比較をグラフにした。

 他国と比較した場合の日本の高齢者の特徴は持ち家一戸建てに住んでいる比率が格段に高い点と長く同じ住宅に住む傾向が強い点にある。持ち家一戸建ての比率は78.4%と同じく持ち家一戸建てが多い米国より高く、韓国、ドイツが半分以下であるのと対照的である。

 入居時期も日本の高齢者の場合1950年代以前が19.2%と約2割を占めており、他国がせいぜい1割強なのとは比較にならないほど長く同じ住宅に住んでいる者の比率が高い。

 欧米の住宅の耐久年限は日本よりずっと長いが、そうであるだけ、既存住宅の間で移り住むのも常態化してるものと考えられる。

 米国、スウェーデンは高齢者にもかかわらず2000年以降に現在の住宅に入居した者が、それぞれ、35.0%、31.6%と非常に多くなっており、高齢者は転居したがらないという日本の常識は当てはまらないようである。米国においては、1990年代後半頃から、サブプライムローン(信用度の低い層への住宅ローン)の行き過ぎと住宅バブルが問題視されるようになったといわれるが、その影響の可能性もある。

 韓国の高齢者の住宅形態の特徴は分譲の集合住宅が36.5%と持ち家一戸建ての45.2%に迫るシェアを有している点にある。

 韓国に行くと大都市圏に細長い高層マンションが林立しているのに驚かされるが、これは、日本と異なり地震がないという条件の下で、急速な近代化に対応して大都市に人口を集積させるためには、これ以外の方法がなかったためである。

 また、多くの高齢者がもと住んでいた田舎から息子などの住む大都市のマンションに移り住んでいるのも日本と異なる大きな特徴である。図録1220で見たように韓国の高齢者は自営の農林漁業に従事していた者が3割を越えているが、住んでいるのは大都市の集合住宅である割合がかなり高いのである。入居時期を見ても1990年代後半以降の最近20年間に現在の住居に入居した高齢者が55.7%と5割以上を占めており、マイホーム取得後、高齢になって余り住居を変えない日本とは対照的な姿となっている。

 この他、ドイツ、スウェーデン、フランスで集合住宅に住む高齢者の比率が高い点も目立っている。ヨーロッパでは都市の生い立ちが新大陸やアジアとは異なっており都市の集合住宅に古い歴史があるからだと考えられる。

(2008年3月10日収録、2011年6月13日更新、2013年4月18日フランス追加)


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