報告書でこの世界マップには「移民流入は所得レベルにかかわりなく世界各国に広がっている」という題がつけられている。 移民人口比率が高い地域として目立っているのは、比率の高い順に、@中東産油国、A西欧諸国、B米国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダなど旧英領植民地である。 特に、@のアラブ首長国連邦(UAE)は世界1の88.1%であり、カタール、クウェート、バーレーンもそれぞれ、77.3%、72.8%、55.0%と人口の半数を越えている。 A西欧諸国では、英国の5.6%は低い方であり、独仏が10%前後、北欧のスウェーデンの12.6%など1割以上の国も珍しくない。 もともと移民がつくった国と言えるBの諸国も5%前後とある程度高くなっている(オーストラリアは11.0%と例外的に高い)。 アジアの中ではシンガポール、マレーシアが、それぞれ、38.4%、10.7%と高くなっている。そのほかではタイが5.2%とやや高い。2大人口大国のインド、中国は両方0.1%と比率が低い。日本も1.8%と低く、韓国は3.0%とやや高い。 世界銀行による移民人数のまとめ(図録1170jと共通) 移民の人数について世銀の世界開発報告書2023は次のように報告している(p.1〜2)
移民数の基本データは以下の通り(世界開発報告WDR2023移民データベース)。
「発着地としてはますます重要性を増した国、地域もあれば、重要性が失せたところもある。例えば、ヨーロッパからラテンアメリカへの巨大な移動は今日ではもうない。湾岸諸国への移民は60年前にはほとんど存在しなかったが、今ではこれら諸国はもっとも大きないくつかの移民発着ルートの着地となっている。この間に、かつて発地だったアイルランドやイタリアは今では着地となっている(ここでは、原文のoriginを「発地」、desttinationを「着地」、corridor(回廊)を「発着ルート」と訳した)。 国境を越える人口移動はますます多くの発着ルートに分散するようになっている。1970年には4万以上の発着点のうちわずか150のルートで世界の移民の65%を占めていた。2020年までのこの割合は50%にまで低下している。今日の主要な発着ルートはメキシコから米国、インドからアラブ首長国連合やサウジアラビア、インドや中国から米国、カザフスタンからロシア、ロシアからカザフスタン、バングラデシュからインド、フィリピンから米国などである。さらにこれらに加えて大きな発着ルートは、シリアとトルコ、ベネズエラとコロンビア、ウクライナとポーランドの間といった移住を余儀なくされる主な難民状況とむすびついている。 送り出し諸国(発出地) 移民送出の最大地域は中所得諸国である。そうした移民は母国の最貧層でも富裕層でもないのが普通である。すなわち、移動する資金があり、移動するインセンティブもあるのである。紛争と迫害の状況に置かれている時でも、集団全体が暴力の対象となっている場合など例外はあるとはいえ、母国を去る手段を有している者ほどまず最初に母国を離れるものなのである。 海外移民が母国の人口のかなりのシェアを占めている国もある。多くの小島途上国では人口の25%を大きく越える海外移民率となっている。中欧・東欧の多くの国では、また、15%を越える大きな海外移民率である場合も普通である(彼らは西欧諸国へのアクセスが他地域より容易である)。母国人口に占める難民割合が高いのは中央アフリカ、ソマリア、南スーダン、シリア、ウクライナ、ベネズエラである。すべての国の平均の海外移民率は母国人口の7%である。 受け入れ諸国(到着地) 移民の到着地は所得水準にかかわりなく世界各国に広がっている。移民流入が多い主要な受け入れ国は米国、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、ドイツ、フランスなどである。オーストラリア、カナダ、英国といったその他の国では時間とともに帰化した移民が多くなっている。 受け入れ国の移民人口比率はさまざまである。それは湾岸諸国で最高でり、アラブ首長国連邦では88%もの高さに達している。多くのOECD高所得国でも、5〜15%といったかなりの高さに達している。コスタリカ、コートジボアール、ガボン、カザフスタン、マレーシア、シンガポールといった隣国より相対的に裕福な国に向かう地域内の移民もある。移民人口比率は人口の少ないベリーゼ、ジブチ、セイシェルといった国でも高い場合がある。最後に、受け入れ国における難民の割合は、普通、1%以下と大きくないが、例外はある。例えば、2022年中ごろの段階で、レバノンでは6人に1人、ヨルダンでは16人に1人、コロンビアでは21人に1人は難民である。 (2023年9月8日収録)
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