ここでは、世界の動物衛生の向上を目的とした政府間機関であるWorld Organisation for Animal Health(OIE、国際獣疫事務局)がまとめている世界の獣医師数をグラフにした。 獣医は従来からの畜産の関連職業であるとともに、先進国では、近年、イヌ、ネコなどのペット関連職業としての側面も大きくなっている。そこで、各国比較のために先進国が中心のOECD諸国とそれ以外とを分けて表示した。 最初の図には、人口対比、次の図には家畜数対比のデータを同時に示した。 OECD諸国の中では獣医師数は米国の15万6,800人が最も多く、スペイン、メキシコがこれに次ぎ、日本は第4位の3万9,100人となっている。これで判断すると日本は、結構、獣医の多い国ということになる。 人口10万人当りの獣医師数を見ると日本は、OECD諸国の中で、ポーランド、トルコに次いで少ない30.7人である。これで判断すると日本は獣医の少ない国ということになる。OECD諸国の中ではスペイン、ベルギーは人口10万人当りの獣医師数が122.0人、118.2人と日本の4倍の密度である。 日本は江戸時代まで家畜肉を食べていなかったし、今でも肉類消費は少ない(図録0205)。また肉類・乳製品の輸入も多い。このため国内で飼育している家畜数は人口の割に少ない(図録0450、図録0452)。家畜数が少ないのであるから、獣医もそれだけ需要が相対的に少ないということになる。 そこで2番目のグラフでは、家畜数(家畜の大きさから豚5頭を牛1頭に換算するといった処理後の家畜数)10万頭当たりの獣医師数を対照させた。 すると日本は10万頭当たり664人となっており、OECD諸国の中で、チェコの490人を上回って最も多くなっている。これで判断すると日本は獣医師数が非常に多い国といえる。 OECD諸国の中で10万頭当たりの獣医師数が最も少ないのはオーストラリアの33人であり、日本の20分の1となっている。OECD諸国以外だとインド、エチオピア、パキスタンなどは、オーストラリアより、さらに数少ない獣医師で同じ数の家畜を見ている。 もっともこれらの国では、放牧での家畜飼養が多く、舎飼い中心の日本などと単純に比較できないことは頭に入れておかねばなるまい。 図で取り上げた45カ国は、米国、スペイン、メキシコ、日本、フランス、ドイツ、英国、イタリア、韓国、トルコ、カナダ、ベルギー、オーストラリア、ポーランド、チェコ、オランダ、ブラジル、インド、エジプト、ウクライナ、アルゼンチン、コロンビア、ベトナム、イラン、バングラデシュ、シリア、エチオピア、ネパール、カザフスタン、ベネズエラ、ナイジェリア、キューバ、スーダン、アルジェリア、カンボジア、パキスタン、ルーマニア、タイ、ボリビア、ラオス、フィリピン、ウズベキスタン、ミャンマー、ケニア、エクアドルである。 (2017年8月2日収録)
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