全国の主婦を対象に正月料理について紀文が調査しており、実際に用意したおせち料理については図録0360で掲げたが、ここでは、いずれのおせち料理を好きだと回答したかについてのランキングを掲げた。

 イタリアには「クリスマスは家族と、正月は過ごしたい人と」という言葉がある。日本とは逆であるのが面白い。イタリアでは、クリスマスは宗教的な意味がある日で、家族と過ごす一方、正月は誰と一緒にいてもよく、大勢で騒ぎながら迎えるのが一般的だという(毎日新聞2019.1.5)。日本の場合は、正月は「おせち料理」を囲みながら、普段は離れて暮らすことも多い家族の絆を確認する習慣である。

 「おせち料理」の中では「お雑煮」が52.8%と2位の「黒豆」の37.2%を大きく上回っており、主役としての地位を維持している。

 「お雑煮」が正月料理の中で特別の地位を有するに至ったのは、「お雑煮」は餅が主役となっており、普段の食事におけるご飯と同じように、おせち料理の中の主食ともいうべき地位を占めているからであるが、もとをただせば、武士の宴会の習慣が一般に広まったためらしい。

 ごった煮である雑煮は武士特有の地方的な食文化だったので、武士の宴会の最初に行われる式三献(しきさんこん)、すなわち絆を深めるため三回酒の盃を主人から従者の皆に回す儀式の一献目の肴として雑煮が位置づけられた。こうした武士の儀礼から、正月のお屠蘇の肴として雑煮を食する習慣が家族の絆を深める行事として一般に広がったという訳である(熊倉功夫「和食のユネスコ無形文化遺産登録と正月の食文化」『2015年紀文・お正月百科』、2014年11月)。

 雑煮はかつて「烹雑(ほうぞう、にまぜ)」といわれた。元日に必ず雑煮を作る習慣は室町時代には成立しており、もともとはサトイモや大根、焼豆腐などいろいろな具が入ったまさに雑煮だったが、徳川氏発祥の地である三河の田舎の習慣からか、江戸時代の江戸では、現在につながる鶏肉とミツバの簡単な澄まし汁がひろがった。今日でも、但馬の一部、阿波の山中などで、餅の澄まし汁に花鰹か数の子を一つまみ上置きする非常に淡白な雑煮が残っているという(篠田統「雑煮」『図説江戸時代食生活事典』雄山閣、1989年)。石川県出身の北前船船主だった私の母方の先祖から伝わっている雑煮は、前夜から漬けた昆布だしの澄まし汁に餅を焼かないでいれ軽く煮立たせてから鰹節を振りかけただけで食する淡白派に属するものである。

 お雑煮に次いで、人気があるのは、順番に、黒豆、栗きんとん、数の子、だし巻き・厚焼玉子、かまぼこ、伊達巻、えび、煮しめ、いくら・すじこ、なます、昆布巻、酢だこ、栗甘露煮、田作り(ごまめ)、たたきごぼう・酢ごぼう、その他、なると・つとである。

 地域別ランキングを見ると、お雑煮は、地域に関わりない不動の首位品目であることが分かる。人気が東高西低のものもあれば、西高東低のものもある。おせち料理の地域色を整理すると以下である。
  • 地域全般で人気: お雑煮、黒豆、栗きんとん
  • 東西で代替: (東)伊達巻、(西)だし巻き・厚焼玉子
  • 西高東低: えび
  • 関東・沖縄で高人気: かまぼこ
  • 関東・沖縄で低人気: 数の子、煮しめ

(2018年12月29日収録、2019年1月4日・5日補訂) 


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