紀文の調査によると、日本人の好きな鍋料理のトップは「おでん」であり、実際食べられることが最も多いのも「おでん」である(図録0358参照)。ここでは、同じ紀文の調査から、日本人の好きなおでん種は何かについて調べてみよう(紀文アカデミー 鍋白書参照)。

 おでんのルーツは室町時代の辛みそをつけた豆腐の串焼きである田楽だとする説が有力である。かたちが踊る田楽法師に似ていたからそう呼ばれたという。そして、宮中の女房言葉で、強飯(こわめし)を「おこわ」と名づけたように、お田楽が「おでん」となったとされる(下図参照)。

 江戸時代には燗酒とともに振り売りされた。「守貞謾稿」には江戸及び京阪の「三都ともにありて、夜のみ市街を巡る生業」のひとつとして「上燗おでん」があげられ、「燗酒とこんにゃくの田楽を売る。江戸は芋の田楽も売るなり」とされている(宇佐美英機校訂「近世風俗志」(一)岩波文庫、P309)。こんにゃくや芋の田楽ということは焼物でなく煮物であろうが酒の肴なので汁物ではなかろう。

 天保時代にはおでんがブームになり、「四文屋」という店で一串4文(80円前後)で売られた。

 いつから串が除かれて、鍋料理としてのおでんが登場したかは定かでないが、1887年(明治20年)に東京・本郷で創業したおでん専門店「呑喜」(のんき)が汁気の多い煮込みおでんを売り出し、近くの東京帝大の人間向けににぎわったという。また、大阪に持ち込まれた煮込みおでんが、みそだれのおでん(田楽)と区別され「関東煮」(かんとうだき・かんとだき)と呼ばれるようになり、関西で更に改良され、1923年(大正12年)の関東大震災のときに、炊出しメニューとして関西の料理人によってふるまわれたとされている。図録0358で見たように、現在では、西日本の方がおでんをより好んでいるところを見ると、本場は関西ということなのかも知れない。

 本題に入るのが遅くなったが、おでん種として人気があるのは、まず大根、そして玉子のツートップである。この2種は、地域別ランキングでも年齢別ランキングでも、すべて1位、2位を占めており、おでん種として不動の人気を誇っている。

 第3位以降は、牛すじ、こんにゃく、餅入り巾着、はんぺん、ウインナー、ちくわ、白滝、さつま揚と続いている。

 地域別ランキングの特徴としては、東日本で「はんぺん」、「白滝」が好まれ、西日本で「牛すじ」、「厚揚げ」が好まれている。愛知県を中心に「餅入り巾着」が好まれ、大阪府を中心に「こんにゃく」が好まれている点も目立っている。

 地域独特の愛好品としては、東京都の「ちくわぶ」、大阪府の「じゃがいも」、北海道の「豆腐」などが目立っている(「ちくわぶ」の地域分布は下図参照)。

 年齢別ランキングとしては、若者ほど「餅入り巾着」や「白滝」、「牛すじ」を好み、中高年ほど「こんにゃく」や「厚揚げ」を好んでいる点などが特徴となっている。




(2019年1月11日収録、2020年1月28日「おでんタイムトラベル」、2023年10月30日ちくわぶ分布図) 


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