う蝕(虫歯)の有病率を縄文時代から現代まで追ったグラフを掲げた。

 う蝕(虫歯)は食事の影響によるところが大きく、主に炭水化物、その中でも糖質、その中でもブドウ糖、砂糖などの糖類とデンプンなどの多糖類によってもっぱら引き起こされるとされている。甘いものだけでなく、コメ自体も虫歯の原因になるのである。

 う蝕(虫歯)の有病率の長期推移を見ると古墳時代に5%以下ともっとも低かった値が室町時代から江戸時代にかけて20%にまで達し、その後、明治維新前後にいったん低下した後、現代では35%までに急上昇した。

 高度成長期における虫歯有病率の上昇が甘いものの普及によるものだということは、小学生の虫歯率がこの時期急上昇したという統計データや急に甘いものが出回るようになって米軍占領下で生まれた私は虫歯にならず、5歳下の妹が虫歯になったというような個人的体験から疑いようがない。

 しかし、江戸時代までに虫歯が増えた理由は、甘いものではなく、主食である米食の普及、しかも精米普及によるものである。江戸時代に精米(白米)が普及し、それゆえのビタミンB1不足が「江戸患い」と呼ばれた脚気の蔓延の原因となったことはよく知られているが、同時期に同じ理由で虫歯も増えたのである。

 日本人の身長の長期推移を見ると古墳時代のピークからだんだんと低くなり、江戸時代に最も低くなっている(図録2182に掲げた身長の長期推移図を以下に再掲する)。

 ちょうど、江戸時代までは虫歯の有病率の推移と裏返しの推移となっており、両方ともに、米の主食化という変数が関係していると考えざるをえない。


(2017年1月16日収録)


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