経済発展に伴う食生活の充実は、当初、1人1日当たりの供給カロリーの増加となってあらわれるが、その後、食料の多様化が起こる。食料の多様化は、米食民族の場合、穀物消費比率の低下となってあらわれる。

 この現象をデータで見るため、日本、韓国、中国など東アジアの米食民族と欧米の主要国について、供給カロリーに占める穀物から摂取するカロリーの比率の変化をグラフにした(なお、中国の北半は小麦文化圏である−図録0431参照)。ここで、穀物とは、米、小麦、大麦、トウモロコシ、モロコシなどを指し、飼料穀物など直接食料とならない分は除いたものである(豆類やイモ類も含まない)。

 日本、韓国、中国という米食を主とする民族では、ピーク時には、7〜8割は穀物からカロリーを得ていた。日本では、戦後しばらくしてこの比率は急激に低下しはじめ、1969年に50%を切った後、1980年代半ばには4割程度で横ばいに転じた。韓国も日本からやや遅れて穀物比率は低下しはじめ、大体、日本と同じテンポで低下を続け、1999年に50%を下回っている。中国は、韓国からも遅れて、穀物比率は低下に転じたが、韓国と同様に急なテンポで穀物比率は低下を見ており、2007年に50%を下回っている。韓国や中国は最近には日本より高いレベルでほぼ横ばいに転じている。

 なお、日本は、戦時中・終戦後の食糧難でいも類からのカロリー摂取が増加したが、戦時中のデータはなく、戦後直後は、米の供給は戦前より低下したがその代わりに米国からの援助物資として小麦(パン)の供給が急増したため、1946〜50年に穀物比率はかえって増加している。最近でも米離れといわれるが、ラーメン、うどん、パスタ、パンなど小麦製品も合わせた穀物全体では、比率は微減である。

 早くに経済の成熟が進み、もともと肉食や乳製品が大きな部分を占めているドイツや米国では1960年代から穀物比率はほぼ横ばいである点が東アジア諸国と比較して大きな特徴である。

 図中にコラム的に引用したように、欧州では19世紀末から20世紀にかけて穀物比率はピークを迎えている。

 最近は、健康やダイエットを重視する傾向からか、穀物比率は、各国でむしろ反転増加の傾向にあると見られなくもない。パスタ料理、米料理などが定着しており、南部を中心に経済発展が遅かったイタリアでは、ドイツ、米国と比べ穀物比率が高く、また1960〜80年代はなお穀物比率が低下傾向にあった。最近は、日本とドイツの中間程度の水準で横ばいに転じている。

(2004年6月21日収録、図録0200のサブページ、2011年1月17日国数増・更新、2012年7月17日更新、2014年8月11日更新、2020年11月7日図中引用)


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