人口1人当たりのGDPは、経済力の水準、あるいは所得水準をあらわす指標として、その世界ランキングが世界の注目を集めるデータとなっている。すでに図録4542では、先進国の中での日本の順位がどう推移してきたかを、米国やドイツなどの主要国と比較しながら見たが、ここでは、同じ先進国の中のランキング推移で、近年、経済面での地位を上昇させている東アジア諸国の状況を見てみよう。

 IMFのデータベースによって、為替レート・ベースの1人当たりのランキングの推移を示した最初のグラフを見ると、日本に次いで、シンガポールと香港が順位を1980年代以降持続的に地位を高め、香港が2000年代以降、日本と同様に順位をやや低下させたのに対して、シンガポールは、2000年代後半から、日本を上回る地位を占めるようになった点が印象的である。

 韓国や台湾は、為替レート・ベースの1人当たりのランキングでは、20位台の後半〜中位の地位を保ったまま、推移している。

 もちろん、同じ所得で世界の商品をどれだけ実際に買えるかという考え方からすれば、為替レート・ベースの比較は大きな意味を持っている。しかし、実際に消費している商品の量が為替レートで大きく変動するわけではないので、豊かさの指標としては為替レート・ベースの比較には限界がある。これを克服しようとして開発されている指標がPPP(purchasing power parity、購買力平価)ベースのGDP比較である。これは一定の商品群を入手するのに各国の通貨でいくらあればよいかを調査して、これをもとにGDPを比較した指標である。

 同じくIMFのデータでPPPベースの1人当たりGDPのランキングを第2の図に掲げた。これで見ると東アジア諸国の地位は、第1の図よりずっと高い点が目立っている。

 シンガポールはデータのある1980年以降、常に日本より高いレベルを維持しており、1980年後半に、順位を大きく上昇させた後、大方の欧米諸国を上回って、1995年以降、世界第3位、2006年以降、世界第2位の地位を保ち続けているのである。香港も2000年代前半以降は、日本を上回る地位を獲得し、現在は米国並みの水準となっている。台湾も2009年以降は日本を上回り、現在も順位を上昇させている。韓国はなお日本を下回っているが順位を上昇させ、2018年には上回っている。

 日本経済は、単に、1人当たりのGDPの順位の低迷だけでなく、こうした東アジア諸国との比較において、相対的に地位を低下させている点で、かつてジャパン・アズ・ナンバーワンと呼ばれた時の状況とは大きく異なっていることが分かる。

 コロナ禍に見舞われた2020年については東アジアの被害程度が相対的に低かったせいもあって、中国に取り込まれつつある香港の順位は変わらなかったが、台湾、韓国は為替レート、PPPとも上昇している。日本も被害程度は相対的に低かったが順位はほとんど不変だった。

 なお、世界のすべての国の1人当たりGDPについては、為替レート・ベースは図録4540、PPPベースは図録4541に示したので参照されたい。

(2015年3月3日収録、2015年10月14日更新、2016年12月12日更新、2018年3月6日更新、2018年11月24日更新、2019年10月29日更新、2020年10月17日更新、2021年10月13日更新、2022年10月12日更新、2023年10月10日更新)


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