日本人の背の高さランキング


 日本人が欧米人に比べ背が低いことは、経済成長に伴い栄養が改善されてかつてよりはずっと背が高くなった今でも、テレビで見る外国人、国内にいる外国人との比較で感じていることである。

 ここではOECD諸国及びアジア太平洋諸国の男女の身長についての統計データをグラフ化した。データの出所はOECDのSociety at a Glanceである。日本と世界の平均身長の19世紀以降からの長期推移については図録2195参照。日本とアジア諸国との身長比較、及び栄養改善による若年層と高年層の身長差は図録2190参照。また、寒い地方の国民の身長の方が高いというベルクマンの法則をわが国の都道府県でも成り立っているかを図録2197で検証した。

 男女はほぼ平行したパターンなので、男性についてみてみよう。

 日本人男性の平均身長は171.6pであり、最も背の高いオランダ人男性181.7pよりちょうど10p低くなっている。背の高い方では、オランダの他、デンマーク、アイスランド、スウェーデンでは男性の平均身長が180pを越えている。アジア・太平洋地域の中でも、オーストラリア、ニュージーランドといった欧州移民の国のほか、トンガ、フィジーといったオセアニア諸国もほぼ175p以上と日本人より背が高い。

 一方、日本人より身長が低いのは、ヨーロッパではポルトガルのみ、米大陸ではメキシコ、アジア・太平洋では韓国、モンゴル、中国などの東アジア諸国、及びマレーシア、フィリピンなど東南アジア諸国、そしてインドである。

 身長の調査方法については、実際に測定する方式と自分で申告する方式とがあり、申告方式では背を高く見せようとするため、測定方式の方が適切だとされる。ある研究によれば、成人の男女における過大評価の平均は1pである(OECD Society at a Glance 2009)。体重ほど両方式の差は大きくないので身長に関してはこの点をそう気にする必要はないであろう。

民族・人種ごとの身体的特徴

 男女のデータがともに得られる国について、男女の平均身長の相関図を描いてみると、身長だけの単純なグラフであるが、男女の身体的特徴が民族・人種毎にグループ化されることが明瞭である。

 身長の高い方から、以下の7つにグループ化される。

 @北欧・中欧・東欧
 Aアングロサクソン
 Bオセアニア諸島
 C南欧
 D中央アジア
 E東アジア
 F東南アジア・南アジア・ラテンアメリカ

 オセアニア諸島は別にして、これらのグループの諸国を囲う楕円をその中にグループ外の国を入れずに描ける点に民族・人種毎の身体的特徴の共通性をうかがうことができる。中央アジアは男女ともにデータが得られる国はアゼルバイジャンのみであるが、女性の身長を考えるともし男性のデータが得られれば図の楕円の中に収まることは確実だと思われる。

 全体を見て最初に気がつくのは北方地域ほど背が高いという一般傾向がある点である。放熱を促進した方がよいか抑制した方がよいかという要因から、暑い地域ではからだが小さくなり、寒い地域ではからだが大きくなるという恒温動物共通の法則、すなわちベルクマンの法則が働いているためである(図録2190【コラム】参照)。

 男女の身長の相関度は高いが微妙な違いが相関図からもうかがえる。すなわち、アングロサクソン系諸国とラテン系の南欧諸国を比べると女の平均身長はほぼ同レベルであるのに対して男の平均身長は前者が後者を上回っていることが分かる。いいかえると男女の身長差についてアングロサクソン系よりラテン系の方がかなり小さいのである。ラテン系のポルトガル人は、女性は日本人よりかなり背が高いのに、男性は日本人よりむしろ背が低くなっている。

 また、北欧・中央・東欧とアングロサクソンとでは男性の身長では重なり合うが女性の身長では身長が重ならという点でグループ差がはっきりしている。

 アングロサクソンの中で米国はやや背が低い方にバイアスがかかっているが、これは、ヒスパニック系白人の比率がかなり高いためと考えられる。しかし、それだけが要因ではないとみなされている点については後述の通りである。

 トンガ、フィジーといった太平洋諸島人はオーストロネシア語族(マレー・ポリネシア語族)に属しており、アジア人の一派と見てよいが、ベルクマンの法則の反して、ハワイ出身の相撲力士と同様に西洋人並みに背が高い。これには、広い太平洋を航海しているうちに環境に適応して新たに獲得した進化だと見なされている(図録2190参照)。

 中央アジア・グループについては、アルメニア人は少し系統が異なるが、カザフスタン、アゼルバイジャンは、いずれもトルコ系のカザフ人、アゼル人が中心の国である(図録8975)。女性の身長からみてトルコも中央アジアと近い。

 東アジア・グループについては日本が最も背が高く、北朝鮮が最も背が低い。これは遺伝的な要因と云うより経済発展度の違いととらえることができる。日本人も途上国から先進国へと成長した戦後50年間に10p以上背が伸びたのである(図録2182参照)。

 最も背が低いグループとして、マレーシア、フィリピン、カンボジア*、インドネシア、東チモール*といった東南アジアやインド、ネパール*、バングラデシュ*、モルディブ*といった南アジア、及びラテンアメリカのグループが来る(*の国は男性のデータがないため散布図上は非表示)。ベルクマンの法則に則した遺伝的な要因と経済発展が遅れているという要因とが両方働いている結果と考えられる。ラテンアメリカのメキシコはラテン系白人にインディオが混血しており、身長は南欧諸国よりさらに低い。もっともメキシコの場合なお途上国のため栄養水準の制約による側面もあろう。

身長に対する経済発展の影響

 図では各国の身長の時系列変化は分からないが、OECDの報告書は、OECD諸国平均では身長は伸びつつあるとしている。「45〜49歳と20〜24歳とを比較するとこの25年間に男では3p、女では2p背が高くなったことがうかがえる。こうした成人の身長の伸びは子どもの時期の全国的な栄養改善を示している。中でも目立った実績をあげているのは韓国であり、青年男子は父親世代より6p背が高く、若い女性は母親世代より4p背が高い。逆に米国は貧弱な実績となっている。米国では1世代経っても背が伸びていない(Komlos,2008)。近年の相対的に背が低い人々の移民流入ではこうした身長の伸びの停滞を説明できない。」

 日本と韓国を比較すると全体としては日本の方が韓国より平均身長がやや高いが、韓国はまだ背が低かった時代の中高年を含んだ数字なので、若年層では韓国人の方が背が高いと考えられる。韓国で背が低かった時代のままという性格が強い北朝鮮では身長は伸びていない。2000年以降、韓国に入国した20〜60歳の脱北者1200人を対象にした調査の「調査対象者の体格をみると、男性167センチ(韓国人の平均は174センチ)、女性156センチ(同160.5センチ)と韓国人平均に比べ、小さいことが明らかになった。」(毎日新聞2011.1.20)(図録2190参照)やはり長期間にわたる南北の摂取カロリーの違いの影響は大きい(図録0200参照)。

 世界各地域(大陸別)の平均身長の長期推移を日本の長期推移と比較した図録2195に、身長に対する経済発展の影響は明確にあらわれているので参照されたい。欧米人もそう昔から背が高かった訳ではなく、以前は中国人より背が低かったのである。

取り上げた国

 取り上げた国全44か国の内訳は、図の順番に、ヨーロッパは、19か国、具体的には、オランダ、デンマーク、アイスランド、スウェーデン、ノルウェー、ドイツ、オーストリア、フィンランド、チェコ、ベルギー、スイス、ポーランド、ギリシャ、アイルランド、英国、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガルである。アメリカ大陸は、3か国、カナダ、米国、メキシコである。アジア・太平洋諸国は、22か国、具体的には、オーストラリア、ニュージーランド、トンガ、フィジー、カザフスタン、アゼルバイジャン、アルメニア、日本、韓国、トルコ、モンゴル、中国、マレーシア、北朝鮮、カンボジア、インド、フィリピン、ネパール、東チモール、インドネシア、バングラデシュ、モルディブである。

(2009年5月11日収録、5月18日コメント追加、2010年8月19日米国の黒人要因記述削除、2011年1月20日脱北者の身長、2013年8月2日アジア太平洋諸国を含めた新版にバージョンアップ、旧版は図録2188xとして保存、2023年11月23日新版作成につき旧版2として保存)


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