原発を「すべて廃止すべきだ」とする意見を脱原発志向と呼ぶならば、これが、東日本大震災にともなう福島第一原発の原子力事故以降、だんだんと増えているのか減っているのかは、それじたい国民の大きな関心事であろう。 NHKの世論調査では、これまで、各種の意識調査の中で、原発の今後に関し、同じ設問で調査を行っている。これによれば、原発事故後、脱原発志向は、事故後から2014年にかけて、20%前後から30%へとじりじりと拡大していったといえよう。 原発に対して国民は「羹に懲りて膾を吹く(あつものにこりてなますをふく)」状態にあると考える論者もいたが、時間が経過しても、脱原発志向が弱まらないこうした状況を、原発ショックが余りに激しかったので、なお、そうした状態から抜け出せないためと見るか、それとも、当初のショックを脱し、改めて、理性的になって考えた結果、地震多発国としての認識や核燃料廃棄物の捨て場の確保難等から脱原発意見がなおさら強まって来ていると見るかは、それこそ見方によるだろう。 2013年9月調査から同年12月調査にかけて、現状維持から減原発、脱原発へかなりシフトしている。NHK放送文化研究所「放送研究と調査」2014年4月号によれば(p.17)、20歳以上で比較すると現状維持27%→21%、減原発41→46%、脱原発29%→31%という変化である。「この間では、11月12日に小泉純一郎元首相が日本記者クラブで会見を行い、「安部首相が今、原発ゼロを決断するのに、こんな恵まれた環境はない」「即ゼロがいい」と述べている。」(同誌) ところが、2015年12月調査では、脱原発志向は、それまでの30%近くから21.5%へと低下したのが目立っている。現状維持や減原発の割合が大きくなったためである。この時点だけの特殊な結果なのか、意識の逆転が起りはじめたのかは、まだ、わからない。また、その後に起った2016年4月の熊本地震が国民意識にふたたび影響を及ぼしている可能性もある。 NHK以外を含めて丹念に各種調査結果をフォローした研究論文を発見したので結果を参考図として引用した。ここでは、「減らす」と「全廃」を合わせて「減らす」と括られているが、やはり、廃止志向は時系列的に拡大の傾向にあると言わざるをえないだろう。なお、この論文では、原子力専門家への調査結果が国民一般より原子力利用について積極性を維持している点を明らかにし、「専門家と一般住民の原子力政策に対する認識のギャップは、震災前以上に大きい」(日本語論文要約)と分析している。 NHKの原発関連調査の概要
*住民基本台帳または有権者名簿から層化無作為2段抽出
(資料)NHK放送文化研究所Webサイト(2014年2月4・5日収録、2014年5月1日更新、11月10日更新、2015年6月10日各種調査まとめ論文引用、2016年6月3日2015年12月調査追加)
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