示されているリスクは、経済リスク(景気と食料価格)、災害リスク(自然災害と気候変動・温暖化)、疫病リスク、健康リスク(出産リスク)、犯罪リスク(殺人発生率)にわたっている。 この30年間のリスクの状況は、以下にコメントするように、分野別、地域別に一律ではない。 1.自然災害・気候変動・食料価格変動は世界的に拡大している。 干ばつ、地震、洪水、嵐といった自然災害の発生率はどの地域でも上昇傾向にある。海面レベルの上昇に見られる温暖化と気候変動のリスクは大きくなっている。食料価格は2000年代半ばに大きな変動を見ている。 2.健康リスク(出産リスクで代表)は世界的に縮小している。 途上国では深刻だった出産リスクが大きく低下している点からうかがわれるように、全世界的な健康リスクは縮小傾向にある。これは上下水道、病院、衛生設備などの保健インフラの改善や衛生思想・医療技術の世界的普及によるものだと思われる。 3.経済リスク(経済変動)や伝染病は先進国で拡大し、途上国では縮小している。 深刻な景気後退による経済変動リスクは、かつて中南米、アフリカなどでとても無視し得ないほど頻繁だったが、21世紀にはその頻度はかなり低下した。一方、かつて比較的安定していた先進国・OECDの景気変動は、アジア通貨危機、リーマンショック、欧州債務危機などに示されているように、世界を股にかけた金融財政システムの高度化にともなってむしろ悪化している。伝染病リスクは、かつて高かったアジア、中南米など途上国では縮小する一方で、かつてこの点のリスクが低かったOECDでは、むしろ、高まっている。これは、グローバリゼーションの進展ともに地域を越えた人の移動がさかんになっているためと思われる。なお、途上国でもアフリカはなお伝染病リスクが高まっている。 4.殺人(他殺)で示される犯罪リスクは先進国で減少し、一部途上国で増加している。 犯罪を代表する他殺(殺人)の人口当たり発生率を見ると、OECD、東アジア、南アジアではおおむね低下傾向にあるが、もともと、リスク・レベルの高かった中南米やサハラ以南アフリカでは、むしろ、持続的に上昇傾向にあるのが目立っている。 (2013年11月27日収録)
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