国連開発計画(UNDP)は毎年「人間開発報告書」を作成、公表している。人間開発指数など定常的にフォローしている項目の他、消費、技術、人権、文化、国際協力など、毎年、テーマを変えて、人間開発の状況を分析し、提案を行っている。 2006年の人間開発報告書のテーマは、「水」である。水利用についての大きなテーマの1つは、国を越えた流域と水利用の共同性である。表流水、湖、地下水脈を含んだ国際河川流域は地球の地表面のほとんど半分を占め、また全世界の流量の60%に及んでおり、人口の5分の2はこうした流域に住んでいるといわれる。 図には、構成国数の多い順に、国際河川の流域の国数と構成国の内訳をグラフにした。ドナウ川(ダニューブ川)は14カ国に共有されている(他にマージナルに5カ国が共有)。ナイル川、ニジェール川は11カ国が、アマゾン川は9カ国が流域をシェアしている。水利上の相互依存の状況は植民地時代の影響下で国境が定められたアフリカ大陸において特に目立っている(図録9420参照)。世界の主要河川の流域図は図録9416参照。 東アジアの代表的な国際河川であるメコン川は、チベット高地の源流から5000メートルの高さを流れ下り、6カ国を横切り、下流デルタに到達している。流域は、上流域にある中国が5分の1の面積を占めているが、それは中国の面積の2%をすぎない。逆に、下流域では、メコン流域は、ラオスの5分の4、カンボジアの90%近くを占めている。 国際河川における水利上の相互依存の状況は、下表のように、各国がメコン川に生活や産業の基盤をおいていることからも容易に理解される。 メコン流域が国境を越えてつなぐ生活圏
報告書の整理によれば、国際河川における上流諸国と下流諸国との間には3つのメカニズムが働いている。 @水供給の競合 上流で灌漑や水力発電で水を使えば、下流の農業や環境に制約が生じる。 A水質への影響 ダム開発において相互調整が図られないと貯留池での沈泥が下流域の肥沃な土壌形成の妨げとなる。また上流での工業排水や生活排水が下流域の環境に大きな影響を及ぼす。 B水流の時間変動の影響 上流の水力発電と下流の灌漑が時期的に重なる。 もちろん、一国内でもこうしたメカニズムは上下流域で生じているが、国際河川の場合には、国際的な調整が必要である点に大きな困難があるといえよう。 最後に、検索上の必要性から、図で掲げたデータを表形式で以下に掲げる。
(2007年5月23日収録)
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