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 球体の地球の地図は地球儀としてあらわすのが一番よいが、持ち運びや省スペースのため、平面に投影した地図が便宜上長く用いられてきている。

 平面図にするには、角度、面積、距離などのいずれかをを正しくして、その他を犠牲にすることを強いられる。
@ 正角図法
メルカトル図法と呼ばれ、緯度・経度線が直交し、2地点を結ぶ直線がそれらに対して角度が一定であるため等角航路で航海するために便利な地図。経線との角度(舵角)を保った船の進行が可能だが、2地点間の最短距離の大圏航路にはならない。また、高緯度ほど距離や面積が拡大されるという欠点もある。
 長方形に収まりやすく学校地図帳でまず親しむメルカトル図法の世界地図をまず掲げた。実サイズの面積に補正した国境線を重ねた下の図を見れば、北極や南極に近い国の面積がいかに過大かということがよく分かる。ロシアやカナダは子どものころからの印象ほど大きい国ではないのである。
A 正積図法
地図上で面積が正しくあらわされる図法をいうが、描き方によりサンソン図法、モルワイデ図法、ひずみを軽減したグード図法などがある。誤った印象を避けた分布図を作成するには正積図法を用いるのが好ましい。
 表示選択でメルカトル図法とグード図法を対照させた図録を示した。アラスカ州やグリーンランドの面積がグード図法では正しく表示されており、メルカトール図法では表示出来ない南極大陸もあらわされていることが分かるが、縁辺部では角度的にはどうしてもゆがみが伴っていることも事実である。
B 正距図法・正方位図法
地球上の距離の関係が正しく描かれた図法を正距図法といい、図の中心からの距離と方位が正しくあらわされ図法を正距方位図法という。図の中心と任意の点を結んだ直線は、最短距離にあたる大圏航路となる。
 下には、東京から各都市までの距離や方位を正しく求めることができる東京中心の正距方位図法の世界地図を示した。東京からもっとも遠い対蹠点(地球の真裏の地点)は、最も外側の円周で表される。周縁部のゆがみは著しい。


 メルカトル図法とは反対に大圏航路は直線に、等角航路は曲線になる。直行便の航空機でヨーロッパに旅行した人はロシアの上空を飛んだことを覚えているだろう。

 旅客機の航続距離は長いあいだ「大西洋を横断する欧米線」を基準に設計されており、たとえばDC-8、ボーイング707などの初期のジェット旅客機は、ニューヨーク−パリ間の約6000kmをノンストップで飛べることを最低条件とし、航続距離が設定されていた。ところが東京〜ロサンゼルス・サンフランシスコまでは直線距離で8000km以上、東京〜ニューヨークでは1万kmに及ぶので、こうしたジェット機では直行ができず給油のための経由地が必要だった。

 そこでアラスカ州のアンカレッジがかつて空路で日本から欧州・北米を行き来する際の“経由地”として知られるようになった。ソ連時代の領空制限から欧州へも南回りルートとともにアンカレッジ経由が使われた。ところが、1990年代には、冷戦とソ連の解体後、シベリア・ルートが本格的に開放され、同時に航続距離1万kmを超える飛行機も続々出現し、“脱アンカレッジ”に拍車をかかった。このため、アンカレッジ経由は、燃料を多く搭載するよりも、積載容量の増やすことを重視する貨物便などを除いて、まれとなった。

 ところが、ロシアのウクライナ侵攻とロシアへの経済制裁にともなって、ロシアは欧米などの航空会社に対し「シベリアルート」領空に飛行制限を設けた。日本の航空会社を含めて再度アンカレッジ経由が復活する可能性があるといわれる(以上、乗り物ニュースの記事より)。

 こうした経緯も上掲の東京中心の正距方位図法の世界地図を見ながらだと直感的に理解が容易である。

(2022年8月24日収録)


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