ここでは国連による2020年の推計人口で比較しているが、一見して、ウクライナとロシアの人口ピラミッドは類似していることが分かる。世界大戦の影響で出生が少なかった70代後半、体制移行期の社会混乱で出生が少なかった10代後半〜20代前半の人口のくびれがそっくりである。 さらに年齢別の性比を比較した図も付しておいた。性比とは男性人口を女性人口で割った男女比指標であり、男性の方がやや多く生まれるので若いうちは1を上回り、女性の方が長生きなので高齢層では1を下回ることになる。 ロシアでは、革命、内戦、戦争、共産化、アル中、自殺、暴力、犯罪といった女性より男性が襲われる確率の高い死因事項が多かったので、日本などと比較しても、40代からと年齢層の早い段階から性比が1を下回っている。この年齢別の性比パターンを見ても、ウクライナはロシアと非常に似ており、同じような死因事項に過去さらされてきたことがうかがえる。 なお、参考までに掲げたウクライナとロシアの出生率は、両国が別々の国に分かれた1991年以降もほぼ同じパターンで推移してきている。ウクライナの方がロシアよりやや低い水準であり、人口ピラミッドもウクライナの方がやや尻つぼまりなかたちとなっている。 これまで長期にわたって同じような辛酸をなめてきたロシア人とウクライナ人とが今、戦火を交え、殺し合っている現状に何とも表現しかねる悲劇を感じるのは私だけだろうか。 農業集団化による1932〜33年の飢饉の被害者は特にウクライナで多く、ウクライナ語でホロドモールと呼ばれ、スターリンによる民族ジェノサイドとみなすとらえ方がある。ただ、当時の出生児が該当する2020年の85〜89歳の対総人口比はウクライナの方がロシアよりむしろ大きいので現在の人口構造に大きく傷痕を残しているとまでは言えないようだ。 (2022年5月10日収録、10月1日国連2022推計で更新)
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