米国のInstitute for Family Studies(IFS)は、米国疾病対策予防センター(CDC)が定期的に行っているNational Survey of Family Growth(NSFG)の最新結果にもとづき、”Sexless America: Young Adults Are Having Less Sex”という記事(2025.1.21)をみずからのサイトに掲載している(ここ)。そこに掲載されたデータグラフを引用した。

 対象としているのは、結婚したり、家族をもうけたりする年齢である22〜34歳米国人のセックスレス割合である。同割合の高低にいい悪いの論議が生じがちなティーンエージャーをあえて対象から除いているのである。

 セックスレスは、前回調査期の2017-19年(2018年値)から、最新の調査期である2022-23年(2023年値)にかけて「これまで」、「過去1年間」、「過去3カ月」という3つの基準のいずれにおいても急増している。

 「これまで」という基準は、童貞率、処女率をあらわしているが、2013-15年調査期(2014年値)から最新調査期にかけて、それぞれ、4%→10%、5%→7%と変化している。「過去1年間」では、同時期に男女それぞれ、9%→24%、8%→13%と変化している。最後に「過去3カ月」では、同時期に男女それぞれ、20%→35%、21%→31%と変化している。

 若い男性のセックスレスはこの10年間にほぼ倍、若い女性はほぼ50%増となっている。

 男性のセックスレスの方が増加が著しいのは、多人数の女性との性交渉がある男性が増えているからだと思われるかもしれないが、性交渉人数別の集計ではそうした事実はない(男性のパートナー1人あるいはせいぜい2人が減り、0人が増えているだけである)という点も記事に紹介されている(下図)。


 従ってセックスレス増加の最大の要因は、結婚が減っているからだと結論づけられる。対象年齢において、結婚が遅れたり、少なくなったりして、性交渉の最大の機会が失われているためなのである。

 結婚適齢期の米国人男女のセックスレスの増加は、特に、新型コロナが流行し始めた2020年以降になって著しい点からは、パンデミックが人間関係に及ぼした影響と見ることも出来よう。

 英国エコノミスト誌は、ジャーナリストの中にはsex recession(セックス不況)と呼ぶ者のもいるこうした傾向について、特に学歴別の違い(下図参照)、すなわち高学歴ほどセックスレスだという点に着目した記事を掲載している(2025.2.15)。米国の大学生活は、しばしばアルコール漬けで性的に奔放な生活としてテレビ・ドラマなどで描かれるが、実際には、米国の大学生の性生活は驚くほど穏やかだとした上で、その要因を探っている。


 同誌は、こうした学歴差が生じる理由として、しばしばセックスレスの要因として指摘される動画配信やテレビゲームといったスクリーンタイムの増加、あるいは米国におけるうつや不安の増加について、いずれも高学歴者の方が多いわけではないという点から否定した上で、その他の3つの要因、@高学歴者の方が仕事に忙しく、自由時間が少ない、A高学歴の女性は自分にふさわしい結婚相手を見つけにくく、結婚が遅れる、B勉強好き、キャリ志向がリスク回避的性向を助長し、性交渉にも慎重となる、といった説を紹介している。

(2025年5月13日収録)


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