最近の米国の映画・ドラマを見ると、昔と異なり、黒人が主人公だったり、白人と黒人が夫婦だったりし、黒人が白人と同様、米国人としての然るべき主役となっていると感じる。

 これは、映画・ドラマの業界人に人種差別を廃絶しようとするイデオロギーが強いからだと思っていた。しかし、今回掲げたギャラップ社の意識調査結果を見て、そうではなく米国人一般の意識変化のあらわれだと気づかされた。

 上のグラフに掲げたのは、白人と黒人の間の結婚を認めるかどうかの意識調査結果を1958年から最近まで追ったデータである。「認める」の回答率は、驚いたことに、1958年の4%から2021年の94%へとまったく正反対への変化である。特に、1995〜2005年の10年間に大きく「認める」比率が上昇している。

 図には、年齢別、国内の地区別の容認率の差異の推移も掲げたが、年寄りや南部に人種間の結婚を認める意見が少ないという従来型の意識が1990年代以降、急速に変化し、年齢差、地区差がほとんど消滅してきている状況が印象的である。そうでなければ米国人の94%が「認める」ということにはならないのだと改めて感じる。

 米国は人種差別の国だと思っていたが、こんなに意識が変化しているのなら、もう米国は人種差別の国だとは言えないのではないだろうか。

 そうであるなら、なぜ、米国で警察官による黒人殺害事件を契機とした人種差別撤廃の運動が現在でもよく起きるのであろうか。

 米国人が人種問題を米国にとっての最大の問題と捉える比率の長期推移を同じギャロップ者の調査データから追ったグラフをページ末尾に掲げた。

 米国では1950年代から1960年代にかけて黒人や他のマイノリティ・グループが人種差別や法の下の平等をた公民権運動(Civil Rights Movement)が展開された。この時期から現在にかかて、長期的には、人種問題の重要性は低下してきていることがうかがえる。

 ただし、2010年代〜20年代には、上昇のうねりの時期が認められる。これは、上に見た意識変化の大きかった「1995〜2005年の10年間」に続く時期である。

 つまり、このうねりは、米国で、再度、人種差別がひどくなったと言うより、むしろ、人種の平等意識が高まった結果、白人警官による黒人への不当な扱いについて、以前のように黒人が諦めなくなった。さらに黒人だけでなく白人もおかしいと思うようになった、という変化のあらわれと解するのが妥当なようだ。


(2025年2月14日収録)


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