人が病院以外で亡くなり、明らかに病死でない場合「変死体」と呼ばれ、警察が犯罪によるものか判断している。

 ここで「変死体」と呼んでいるのは、正しくは「異状死体」である。厳密な意味での「変死体」は、「異状死体」のうち、犯罪によるものと判断された「犯罪死体」と犯罪によるものではないと判断された「非犯罪死体」(事故死、自殺等多くを占める)を除き、いずれかの判断がつかないものを指す。「異状死体」は、まず、警察のスクリーニングによって、「犯罪死体」「変死体」「非犯罪死体」の3種に分けられ、さらに「変死体」について医師の立ち会いの下に検視、あるいは検視後の司法解剖が行われ、犯罪との関わりの有無が再度判断される(中根憲一「わが国の検死制度」レファレンス、2007.2)。

 変死体(異状死体)の都道府県別の報告数を図録とした。この情報は、大相撲の力士急死事件と捜査のための解剖との関係を解説した東京新聞の記事から採られた。

 大相撲の序の口力士斉藤俊(たかし)、しこ名・時太山の急死事件(2007.6.26犬山市)で、愛知県警が検視も司法解剖もせず「事件性なし」と判断した点に初動ミスが指摘されている。新潟市に住む実家の両親が、暴行のキズが多数残る帰宅した斉藤さんの遺体を見て不審に思い、裁判所の鑑定処分許可状により行われる司法解剖ではなく、遺族の承諾を得て費用を県が負担する「公費承諾解剖」として、新潟大で行われ、解剖所見が愛知県警に送られた。

 これと関係して、解剖の対象となる変死体と実際の解剖数に関し、警察庁のデータが東京新聞(07.10.20)に掲げられた。解剖率が都道府県によってかなりのバラツキがあり、行政解剖の有無という制度上の違いを考慮に入れても、全国的に然るべき解剖がきちんと行われているかどうかは怪しいとの疑いの根拠としているものである。

 むしろ、ここでは、変死体の数そのものの方に着眼した。ここで独自に試算した死亡数(住所地ベース)との対比での変死体数の比率を見ると東京が最も高く、神奈川、沖縄、栃木、大阪、埼玉と続いている。最も高い地域が20%近い変死体率であるのに対して、低い地域は10%前後であり、2倍の開きがある。

 栃木、山梨まで含んだ東京大都市圏において変死体率は高く、この他、大阪、沖縄で変死体率がやはり高い。山梨は青木ケ原樹海での自殺が関係しているのかも知れない(もっとも青木ケ原樹海での平成10年の変死体発見が73体という情報もあり影響度はそれほど大きくない)。ただ、死亡が住所地でカウントに対して変死体がおそらく警察所在地でカウントという食い違いや、解剖率の違いからも類推されるように、変死体として認定する地域ごとの捉え方の違いも変死体率には影響している可能性がある。

 なお、古い警察白書(昭和49年)によれば、1973年の変死体数が5.1万体とあるので、2006年の14.9万体へと約3倍に増加していることとなる。同じ白書によれば、変死体の死因別構成比は自殺、病死、自己過失死がそれぞれ2〜3割、犯罪死は7%とある(下図参照)。


(2011年2月7日収録-作成は2007.11.21であるが掲載が遅れた-、8月1日変死体定義コメント追加、K氏の御指摘による)


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