図には、X軸に晩産化指数(5歳毎の年齢階級別出生率の合計を30歳以上と30歳未満に分け、前者を後者で割った数字をここではこう呼ぶことにする)、Y軸に合計特殊出生率をとり、都道府県と市町村(静岡県)のデータをプロットした。 市町村の例として静岡県を取り上げたのは、全国の平均的な姿を静岡県が示すことが多いためである。新商品の販売テストが静岡県で行われることが多いのもこうした理由からである。図における都道府県の分布においても静岡はちょうど真ん中辺りに位置している。 子どもを生む年齢が遅くなると、すなわち晩産化が進んで高齢出産が増えると、女性が一生に生む子どもの数と見なせる合計特殊出生率も低くなると考えられる。図を見ると確かに都道府県、市町村、いずれにおいても、右下がりの相関が認められる。 ただし、都道府県においては、例外的な地域も見られる。北海道は晩産化が進んでいない割には合計特殊出生率が低い。沖縄や長野は晩産化が進んでいる割には合計特殊出生率が高い。 地域的な合計特殊出生率(Y軸)の格差・バラツキについては、都道府県は最高の沖縄、最低の東京がややかけ離れた値を取っているのが目立つ。沖縄と東京とを除くと都道府県の格差・バラツキより、市町村の格差・バラツキの方が大きいことがうかがえる。 静岡県市町村の中で合計特殊出生率が最も高いのは三島市の近くの長泉町であり、河津町、御前崎市、裾野市、南伊豆町などがこれに続いている。長泉町は、中学3年生までの医療費全額助成や子育てホームヘルパーの派遣など長期にわたって総合的な子育て支援策を実行している成果があらわれている。 逆に合計特殊出生率が低いことで目立っているのは熱海市と静岡市、及び静岡市周辺の岡部町、由比町である。こうした地域で値が低い理由としては、保養所、病院の多い熱海市はやや特殊な住民構成であるためと考えられるが、県庁所在都市である静岡市とその周辺については県内では東京的な性格を有する地域であるためである。 なお、1999年から平成の大合併がおこり、静岡県内でも合併が急速に進んでいる。このため、市町村数が大きく減少しているので、市町村単位での見かけ上の地域差・バラツキは低下している。例えば原子力発電所のある浜岡町が5年前のデータでは合計特殊出生率が県内1位であったが、御前崎町と合併し、図中では御前崎市となったため値の高さは薄められることになった。 コーホート法による市町村の将来人口推計に当たって、所属県の年齢別出生率を使用することがあるが、以上のような市町村格差があるので、やや問題があるといえよう。 静岡県市町村の合計特殊出生率
(2003〜07年平均(ベイズ推定値))
(資料)厚生労働省「人口動態保健所・市区町村別統計」
都道府県の合計特殊出生率(2005年)
(資料)厚生労働省「人口動態統計」 (2004年5月17日収録、2005年7月20日字句修正、2010年6月25日更新かつ図形式変更)
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